古典技法と現代の画材

古典技法と現代の画材

みなさまは今、
どんな画材を使って絵を描いていますか?

物心ついた頃に最初に使ったのは
クレヨンかも知れません。

小学校に上がると、「学童絵の具」
と呼ばれる不透明水彩を使った記憶のある方も
多いと思います。

画材は本当に色々ありますが、

今日は「古典技法」と呼ばれる技法について
少しお話しますね。

絵の具は元は同じ「顔料」の粉

ところで、水彩でも油絵でも
絵の具の元は同じ「顔料」です。

土や、鉱石、科学物質などを
「バインダー」と呼ばれる接着剤の
ようなもので溶き、
「絵の具」になります。

この混ざるバインダーの違いで
「別の絵の具」になるんです。

例えば、日本画なら膠
油絵はオイル、
アクリルはアクリル樹脂、
テンペラは卵などです。

画材のなかには「古典技法」と
呼ばれるものがあります。

代表的なもので、油絵、テンペラ、
日本画などです。

油絵、日本画は良く耳にすると思いますが、

テンペラは耳馴染みのない方もいると思いますので、
少しご説明しますね。

テンペラ画とは卵で溶く技法


古典絵画の中で古くから描かれてきた技法が
この「テンペラ画」です。

中世の西洋の宗教画の中で
多く描かれてきました。

顔料は岩や宝石を砕いた自然物を主に使用し、
それを主に「卵黄」を使って顔料を溶きます。

テンペラ画が描かれていた時代には、
まだキャンバスもなかったので
主に板に石膏の下地を創って描かれました。

12~13世紀頃の宗教画は金箔を施した
テンペラで描かれていることが多いです。

西洋の教会にある、黄金の下地に描かれている
天使の絵や宗教画を思い浮かべてください。
あれがテンペラ画です。

最も有名な絵は
ボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』ですね。
(これは14世紀の絵で、キャンバスに描かれています)

又、有名なムンクの「叫び」も
実はテンペラ作品なんです。

古い古典技法と思われがちなテンペラですが、
現代の画家さんでもテンペラを好んで描く方もいます。

例えば、高根沢晋也さんなどは
精密で美しいテンペラ画を描いています。

フレスコ画

もう一つ、中世の技法で代表的なのは
この「フレスコ画」です。

現代では使われることは余りありませんが、
軽くご説明しますね。

フレスコ画は漆喰の壁などに下地を施し、
乾く前に水彩の絵の具を染みこませて描く技法です、

フレスコとは「新鮮」を意味する言葉で
生乾きの状態で描くためにやり直しが利かず
高い技術が必要だとされています。

ルネッサンス期の有名な、
ミケランジェロの「システィーナ礼拝堂の天上絵」や
ラファエロの「アテナイの学堂」
などがフレスコ画で描かれています。

古典技法との現在技法の併用

古典技法は色々な「お約束」がある為に
独学でやるのは難しいとされています。

制作時間も、例えばアクリル画で
同じテーマとの制作時間を比べると倍以上かかります。

また、古典技法の難しさの一つに
「保存」の問題があります。

つまり、きちんとした配合の溶剤や絵の具を使わないと、
「ひび割れ」が起きてしまい
下手をすると、絵の具が剥げ落ちてきてしまうのです。

これだけ聞くと「古典技法は面倒!!」
と感じられるかも知れませんが、
古典技法には古典技法にしか出せない
「重厚さ」があります。

また、アクリルなどにはない
色の落ち着きなども表現出来ます。

私自身も現在はアクリルをメインに描いていますが、
今後古典技法との併用なども考えています。

アクリル画で良くあるのは、
アクリルで殆ど描き、
仕上げに油絵を塗る方法です。

これはアクリルだけでは表現出来ない
重厚さが出るために、
アクリルを使う画家の人も
良くやる方法の一つです。

又、アクリル画で描いた上に、
日本画の顔彩を使って仕上げると、
落ちついた色合いになります。

 

一つの技法に拘らずに色々併用してみるのも

また新しい世界が広がります。

スキルアップに合わせて画材も変化する


絵は描いている内に、
自分自身もスキルアップしていきますので、
その時々で使ってみたい画材は変わってきます。

私もその時々で、
追求したい方向性が変化してきて、
色々な画材を試してきました。

今現在も画材の可能性を探して
色々な模索を続けています。

使い慣れている画材の方が
失敗も少なく楽に感じますが、

使い慣れている画材以外でも
絵に良い変化をもたらす画材は沢山ありますので、
興味のあることはどんどんやってみてくださいね。

もちろん、絵描きさんの中には
初志貫徹で同じ画材を極めている
人もいますので必ずしも

「画材を変えていく」ことだけが全てではありません。

 

 

まとめ

 

今日もお読みいただいてありがとうございました。

ちなみに私は最初はカラーインク、次は水彩絵の具

アクリル画を使い、その後もパステルや色鉛筆

顔彩、そしてデジタルアートまで色々な

画材を使用しています。

その時々で描きたい画風や仕事への対応で

使用する画材が増えて行ったと言うこともありますが、

画材を変えることによって、画風や描ける範囲も広がり

色々試して見て良かったと思っています。