花まつりとは
花まつりとは、お釈迦さまの誕生日である4月8日に行われる仏教行事です。誕生仏に甘茶をそそぎ、いのちの尊さを祝うことから「灌仏会(かんぶつえ)」とも呼ばれます。
花まつり(灌仏会)は、毎年4月8日にお釈迦さまの誕生を祝う仏教行事です。日本では「花まつり」という名前で広まり、春の風物詩のひとつになっています。
お釈迦さまが誕生されたのは約2500年前、現在のネパール・ルンビニーの花園でした。そのとき、天から九頭の龍が清らかな水を注ぎ、地上には花が咲き乱れ、天地がその誕生を祝福したと伝えられています。これが「花まつり」の由来です。
行事では、花で飾られた花御堂(はなみどう)に誕生仏を安置し、参拝者が甘茶をそそぐ「灌仏(かんぶつ)」を行います。これは、誕生の際に九頭の龍が水を注いだ故事を再現したものです。甘茶はガクアジサイの葉から作られ、ほんのりとした甘さが特徴です。

釈迦受胎図と釈迦誕生図

お釈迦さまの誕生にまつわる仏画には、大きく二つの典型的な図像があります。
一つは、摩耶夫人(まやふじん)が白い六牙の象の夢を見る場面を描いた「釈迦受胎図」です。白象が天から降りて摩耶夫人の胎内に入る夢は、お釈迦さまが母胎に宿られたことを示す瑞兆として描かれました。
もう一つは、誕生の瞬間を描いた「釈迦誕生図」です。中心には右手で天を、左手で地を指す誕生仏が立ち、九頭の龍が水を注ぎ、花々が咲き乱れる情景が描かれます。花まつりの法要で掛けられる掛け軸や絵画には、この誕生図がよく用いられます。

天上天下唯我独尊の意味
釈迦誕生図の誕生仏の姿は、「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」という言葉を象徴しています。
この言葉はお釈迦さまが誕生の際に発したと伝えられていますが、その意味は誤解されやすいものです。
日常では「自分だけが偉い」「うぬぼれが強い」という意味で使われることがありますが、本来の仏教的な意味はまったく異なります。
- 天にも地にも、誰とも代わることのできない唯一無二のいのちがあるということ。
- 「我」は自分個人ではなく、人間存在そのものを指す。
- 一人ひとりがかけがえのない存在であり、比べることなくそのままで尊いということ。
つまり「天上天下唯我独尊」とは、誰もがかけがえのない存在であるという仏教の平等思想を示した言葉なのです。

宝泉寺様への奉納仏画
今回の仏画は、東京都早稲田にある天台宗寺院・宝泉寺様からのご依頼によって制作しました。
宝泉寺様とはこれまでもご縁があり、「星まつり」にあわせて星曼荼羅を制作させていただいたことがあります。

今回は、昼の行事として知られる「花まつり」。
花まつり自体は有名ですが、それを題材にした仏画はあまり例がなく、「寺院独自の個性的なものを用いたい」というご意向から制作が始まりました。
制作にあたり
上空には龍を描きましたが、数を多くすると主役であるお釈迦さまが目立たなくなるため、あえて二頭に絞りました。天地を結ぶ象徴としての龍が誕生を祝う姿をシンプルに描くことで、画面全体のバランスを整えています。
また、今回はお軸として仕立てる作品でしたが、和紙に直接描くことが難しかったため、一度アクリル絵具で描いた作品をベースにし、それを和紙に印刷するという手法をとりました。思いのほか発色や質感が良く、和紙に刷られたことで落ち着いた風合いが加わり、仏画としても違和感のない仕上がりになりました。
春の光に包まれる花まつりにふさわしい明るさを背景にしたこの仏画は、宝泉寺様の本堂に調和し、訪れる方々が花まつりの意味にふれる一助となることを願っています。

この仏画を掲げた「花まつり」の法要は、毎年、早稲田にある天台宗・宝泉寺様にて開催されています。
当日は、同じ絵柄を使用した御朱印の授与も行われています。
詳細な日程やご案内については、宝泉寺様の公式ホームページ等でご確認いただけますので、ご興味のある方はぜひ足を運んでみてください。
花まつりのジクレー版画
このたび制作した花まつりをテーマにした仏画は、ジクレー版画としても仕上げました。
原画の色彩を忠実に再現した高品質な版画ですので、ご自宅でも花まつりの世界を楽しんでいただけます。
詳細はオンラインショップにてご案内しておりますので、よろしければご覧ください。


「准胝観音」
静かな慈愛に包まれる、准胝観音のまなざし ▶ジクレー版画を見る