仏画は元々は信仰の中で生まれたものですが、
時代の流れの中で変化していき
今では現代の絵描きさんが色々なアプローチで描く事も少なくありません。
こんにちは、画家の奥田みきです。
私は「日本の密教カード」や「仏画の塗り絵」なども出版していて
仏画をライフワークとして描いています。
今回は
「仏画とは何か?」を解説したいと思います。
とくに
「仏画って勝手に描いても良いの?」
「仏画を普通に家に飾っても良いの?」など
仏画との日常的な付き合い方をメインにお届けします。
【仏画とは】写仏について
仏画とは、元々は仏教の儀式などに使われて来た絵画のことを言います。
密教系の寺院に行くと飾ってある、大きな両界曼荼羅などが有名ですよね。
それ以外にも独尊で描かれることあり、さまざまな仏画が存在します。
元々仏画は、仏像と同じで仏教の教義を伝えるために成立しました。
特に平安時代の密教の隆盛と共に多くの仏画が描かれていますが
曼荼羅などのお話は長くなりますので、又別の機会にします。
(ちなみに、この絵の「弥勒曼荼羅」も独尊曼荼羅の一つです)
密教曼荼羅と写仏
さて、昨今では仏画と言えば「写仏」を思い浮かべる方も多いでしょう。
ここでは「密教曼荼羅と写仏」を例に、写仏とは何か?についてご紹介します。
平安時代、高野山の祖である空海は中国から密教の奥義を持ち帰った後その難解な密教の教えを伝える為に「曼荼羅」をビジュアルとして描く事を考えました。
そうして出来上がったのが密教曼荼羅でその中には密教の教え通り、無数の仏様が描かれていました。
その後、最初の曼荼羅を手本に、その中に描かれた仏様を多くの僧侶が写し描きました。
つまり「写仏」です。
昔は修行の一環として僧侶だけが行っていた「写仏」ですが、現在では寺院やカルチャー教室などでも気軽に「写仏」が描ける様になりました。写仏をする事は写経をする事と同じで、仏様に向かい、静かな時間の中で自分の心の軸を整えたり、無心になれる時間として、若い人の中でも愛好者が少なくありません。
【仏画について】
さて、「写仏」は和紙など下の透ける紙にトレース(写す)して描くのが基本です。
(昔は和紙に油を染みこませて、半透明にさせたものを使っていました。今で言うトレッシングペーパーの代わりです)
「下絵を写すのが基本」は、色を付けた本格的な仏画についても同じ事がいえます。
写仏は写経と同じで、仏教の教えを表している仏画を写し、描くことを目的とされてきました。
なぜなら「仏さまのお姿」というのは元々仏教の教えの中で出来上がったものであり、
そのお姿にも色々な「決まり」があるからなのです。
これは「儀軌」と呼ばれる本の中に記載されており、諸尊のお姿や拝み方、供養の仕方などが記載されています。
(この辺が神話の神様などと違い、描くのも難しいところであり又、見る人にとっても難しく感じてしまう点だと思います)
私は仏画を本格的に描き始めた時、写仏ではなく自分の画風での「仏様の絵」を描きたかったので、写物は体験はしましたが、仏画(写仏)の先生に習いには行っていません。
ですが、やはり色々分からない事や、疑問に感じることがが多かったので仏師の先生の「仏像講座(講義の方)」に通いました。
そこで、仏像・仏画というのは仏教の経典にポーズの意味や持物などが全て指定さているのだと知りました。
例えば、千手観音は
「第一手には宝珠を持っている」
「第二手には検索を持っている」
「第三手には……」
不動明王は
「右手に利剣を、左手に羂索を持っている」
などが「経典の中に書かれています」
つまり仏様がどんなポーズでどんな持物を持っているのかは
「お経の中に正解がある」のです。
仏画 描い てよいのか?
「仏画」というキーワードで検索をしていた時に面白いキーワードを見つけました。
それがこの段落のキーワードにもなっている
「仏画 描い てよいのか?」です。
前記の様に
「仏画は元々は信仰の為にある」
「仏様がどんなお姿は経典の中に書かれている」
と聞くと、ますます敷居が高く感じますよね。それに元々は宗教画である以上、一般の人間が下手に描いても良いのか?とも思ってしまいます。
実際私も、本格的に仏画を描きはじめた時にこの壁にぶつかって
「信仰の対象である仏さまを(写仏ではなく)描いて良いのだろうか?」
と結構悩んだ時期があります。
でも、大丈夫です。
私が「日本の密教カード」でご一緒した高野山真言宗の阿闍梨でもある小瀧師や、別の僧侶のか方ともこういった話をする機会があり、色々話をししたのですが、むしろ僧侶の方から見れば
「お寺に納める様な仏画は別ですが
仏さまを身近に感じて戴けるのは嬉しいので
どんどん描いて下さい!」
とのことです。
もちろん描かせて戴く対象が「仏様」ですので、失礼のないように、という気持ちは大事だと思いますが、難しく考え過ぎないで良いと言うことです。
今はお寺も色々新しい試みをしている時代です。テクノ法要とか、ドローンに乗って空を飛ぶ阿弥陀様とかもありますよね。仏画もそんな風に、仏様に親しみを込めて描けば問題ないとのことです。
神仏画を描く事についてはこちらでもお話しています。
本来の仏画
ちなみに、お寺に納めるような仏画は「作家の作品」として描くのではないために
絵が描き上がっても「サイン」を入れることをしません。
サインを入れると、その絵が作家個人のものになってしまうからです。
なので仏画師の方が描かれた作品でも、「美術品」として描かれた物にはサインが入れられていますが、お寺にお納めした作品にはサインは入っていません。
ちなみに、画増の方(僧侶で「絵」を専門に描かれている方々のことです)の著書などを拝見していると、宗教的な手順を踏まえた「写仏」の描き方が掲載されていますので、「正式な写仏」をお知りになりたい方はそういう本を読んでみるのもお勧めです。
仏像や仏画は普通の家に飾っても良いの?
私も個展などで仏画を発表するようになって、下記のような反応がありました。
「絵は素敵なんだけれど、普通のお部屋にどう飾って良いのか分からない」
「神棚とかないんですが飾っても良いものですか?」
お寺に飾ってある仏画はとても神聖で厳かで普通の絵と同じように飾って良いものには見えませんよね。
それはなぜでしょうか?
仏画には大きく分けて2種類あります
仏像・仏画は大きく2つに区分すること画出来ます。
①信仰の対象としての仏画(寺院などにあって、拝まれているもの)
②仏教美術品(インテリア仏像・仏画)
この2つには大きな違いがあって、その違いが
「仏さまの魂が入っているか」
どうかです。
寺院などに飾られている仏画(仏像)は「開眼供養」をされており、そこに仏さまが宿っておられます。
※「開眼供養」=書いて字のごとく、仏さまの「眼」を開くことです。
僧侶の方が読経をし、まだカラの状態の仏像や仏画の中に降りて来て頂き、そこに宿ってく儀式です。
寺院などで信仰されている仏画(仏像)は「開眼」されているものなので信仰の対象として拝まれるものになります。
なので、「開眼供養」をされている仏像・仏画はそれ自体が「仏さま」なのです。
お家のお仏壇などでも、中に祀られているご本尊様は大抵はこの「開眼供養」をされていますので、お水を毎朝替えたり、お線香を上げたり、食事を備えたりとても丁寧に扱っていますよね。
でも、仏教美術品(インテリア仏像・仏画)に関しては普通の美術品と同じように扱って大丈夫です。
私も実際「インテリア仏」を所有していますが、棚の上を綺麗にして、普通に飾っています。
まとめ
仏画・仏像の造形は「お経の中にお姿が描かれている」と記載しましたが、お経が複数ある仏様もいらして、数パターンの尊型がある仏様もいらっしゃいます。
写仏ではなく自分の絵で描いてみたいと言う方は、「仏画師」の方が描かれるものは正確な持物(持ち物)やポーズで描かれていますので、それを参考にするのが良いと思います。
私も「奥田みき式仏画の描き方」の記事を書いていますので、よろしければご参考になさって下さい。
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