不動明王は大日如来の化身?見た目の特徴などを徹底解説!

不動明王は大日如来の化身?見た目の特徴などを徹底解説!

皆さま、こんにちは。
幻想画家の奥田みきです。

今回は、大日如来の化身ともいわれる不動明王(ふどうみょうおう)について、

「どんな意味を持つ明王さまなの?」
「ご真言はどのような言葉なの?」
「どんなご利益があるの?」

といった基本的な情報や特徴について、分かりやすくご紹介していきます。

お寺で見かける不動明王像って、なんだか怒ったような顔をしてるよね。
でも、それは人々が道を誤らないよう、叱咤激励してくださっているからなんだ。
今回は、実はとっても慈悲深い、ぼくの仕えている不動明王さまの記事だよ!

不動明王とは?

不動明王とは、密教独特の仏さまである「明王(みょうおう)」の一尊で、真言宗の祖である空海によって伝えられました。

密教の最高位・大日如来(だいにちにょらい)の化身とされ、その起源はインド神話までさかのぼるといわれています。

古くから日本で多くの信仰を集めている仏さまでもあり、「お不動さん」・「不動尊」の名前で親しまれています。

不動明王の意味

不動明王は、仏法を守護し、人々を災いや迷いからお救いになる仏さまです。

不動明王の「不動」とは、不動明王が、

・人々を救うための智慧
・決意が揺るがない心

を持つことを意味しています。

お釈迦さまが悟りを開かれた際、様々な魔の手を退けたように、不動明王もまた強い心と智慧で人々を仏道へと導いているのです。

また「明王」とは、修行する者を煩悩から守る仏さまのことで、悪をこらしめ、仏の教えに導く役目を持っています。

忿怒(ふんぬ)の表情

不動明王に特徴的な忿怒(ふんぬ)の表情は、あえて怒りを以て、煩悩にまみれた救いがたい人を救済するためのものとされます。

仏道の妨げになる邪(よこしま)な心・迷いを断ち切り、煩悩を断ち切れない人は引きずってでも目覚めさせるという、非常に強い力と慈悲を持っている仏さまといえるでしょう。

不動明王は大日如来の化身?

大日如来は、宇宙そのものを象徴する仏さまであり、様々な仏さまが大日如来の化身とされています。

不動明王もまた大日如来の化身であり、如来が教化する(仏の教えを説いて導く)のが難しい人々を導くため、厳しくも慈悲深いお姿で現れます。

罪を裁くというよりは、道を誤った人々を叱り、正しい道へと導こうとするイメージが近いかもしれません。

その厳しい顔の裏には愛があり、信仰する人の良心を強く揺さぶります。

知らず知らずのうちに道を誤ったとしても、不動明王さまは決して見放さず、正しい道へと誘ってくれることでしょう。

不動明王の見た目の特徴

如来・菩薩は後光を背にしている仏像などを多く見かけますが、不動明王は背中に「迦楼羅炎(かるらえん)」を背負っており、この炎は煩悩を燃やし尽くす炎として知られています。

右手には剣を持ち、剣は「利剣(りけん)」・「俱利伽羅剣(くりからけん)」・「三鈷剣(さんこけん)」などといった名称で呼ばれ、この剣で不動明王は三毒の煩悩である「貪(とん)・瞋(じん)・痴(ち)」を断ち切ります。

左手には縄を持ち、縄は「羂索(けんじゃく・けんさく)と呼ばれ、煩悩を縛り上げるだけでなく、煩悩の中で迷う者を引き上げて助けるために用いられます。

顔の特徴

独特の険しい目は「天地眼(てんちがん)と呼ばれ、天地の隅々まで人々を見守っていることを表しています。

右目が天・左目が地を睨みつけているもの、両目をかっと見開いているもの、片目が薄く開いているものなど、仏像によってデザインが異なるのも特徴的です。

髪型も、如来・菩薩に比べるとまとまっておらず、髪を束ねて左側に垂らした弁髪(べんぱつ)、天を突き刺すような逆立った髪「怒髪天(どはつてん)の仏像などが多く見られます。

頭の上に蓮華の花がのっている不動明王像もありますが、これは「沼の上に咲く蓮華」を表現したものです。
苦しみの泥沼に沈んでいる人を上から助けるのではなく、自ら沼に飛び込み苦しむ人の身体を下から抱え上げるという、不動明王の性格をよく表しています。

不動明王のご利益

多くの地域で不動明王が信仰されている理由の一つに、人間が生きているうちに得られるご利益(現世利益)があると信じられている点があげられます。

ご利益の種類も幅広く、代表的なものとしては、以下のようなものがあります。

厄除け
不動明王が持つ利剣は、剣そのものが信仰の対象となるほど強烈な力があるとされ、その力によって厄を除いてくれると信じられています。

学業成就
不動明王の「明」は、サンスクリット語で「知識・学問」といった意味を持っており、学業・技術等の向上を祈願する人が多く見られます。

外敵退散
鎌倉時代、元が日本に攻めてきた際、不動明王をはじめとする仏さまに戦勝祈願したところ、元軍の船団が暴風雨により侵攻に失敗したという言い伝えがあります。

その他
立身出世・商売繁盛・健康祈願・修行者守護・国家安泰などのご利益があるとされています。

不動明王のご真言

ノウマクサマンダバザラダン  センダマカロシャダ  ソハタヤ  ウンタラタ  カンマン

不動明王の梵字

カン

不動明王の守り本尊

不動明王は、酉年生まれの方の守り本尊です。

他の生まれ年の守り本尊については、こちらでご紹介しています。

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不動明王と他の仏さまとの関係

仏教では、人々をあらゆる苦悩から救おうと、様々な仏さまがそれぞれの役割を担っています。

その中には、不動明王と関係が深い仏さまもいらっしゃいます。

不動明王と大日如来

冒頭でもお伝えした通り、不動明王は大日如来の化身であり、怒りや恐ろしさをあえて表に出し、人々を教化しようとしています。

そもそも大日如来は、太陽の光があまねく届くような、宇宙全体の象徴です。

大日如来の光はとっても強力だけど、中には光に背を向けてグレちゃう人もいるよね。
不動明王さまは、そんな人々を「力づく」で救済しようとする、温かい心を持った雷オヤジみたいな存在なんだよ。
五大明王の中心的存在

五大明王の中心的存在

不動明王は、密教の中で五大明王(ごだいみょうおう)と呼ばれる明王の1尊です。

不動明王を中心に、他の明王4尊は東西南北を守護するものとされ、それぞれの特徴は以下の通りです。

大威徳明王(だいいとくみょうおう)

阿弥陀如来の化身とされ、6つの顔と足を持ち、水牛にまたがっています。
生あるものを害するすべての毒蛇・悪竜・怨敵(おんてき)を打ち倒すとされます。
西の方角を守っています。

軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)

宝生如来の化身とされ、身体に蛇が巻き付いているのが特徴です。
悪敵を退け、甘露によって生あるものを救うとされます。
南の方角を守っています。

降三世明王(ごうさんぜみょうおう)

阿閦(あしゅく)如来の化身とされ、ヒンドゥー教のシヴァ神とその后ウマーを踏みつけているのが特徴です。
神々をも仏教に改宗させる力を持ち、三毒を抑えしずめる役割を担います。
東の方角を守っています。

金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)

障害を打ち砕くため、様々な武具を持っているのが特徴です。
もともと人を食べる凶悪な神でしたが、仏教に帰依してからは善神となりました。
北の方角を守っています。

脇侍(わきじ)

不動明王像の左右には、脇侍(わきじ)が安置されていることがあります。

多くの場合、不動明王の左(向かって右)には「矜羯羅童子(こんがらどうじ)」が、右(向かって左)には「制咜迦童子(せいたかどうじ)」が控えています。

いずれも、不動明王の脇侍として、働きを補佐する役割を担っています。

ちなみに、この2人に加えて以下6人の童子が加わった「八大童子」も有名です。

八大童子
  • 恵光(えこう)童子
  • 清浄比丘(しょうじょうびく)童子
  • 恵喜(えき)童子
  • 烏倶婆誐(うくばが)童子
  • 指徳(しとく)童子
  • 阿耨達(あのくた)童子
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不動明王の台座

不動明王は、如来像・菩薩像のように蓮華の花の上に座らず、岩の上に立った姿、または座った姿で表現されます。

この岩座は「盤石(ばんじゃく)」(画像上)といい、救済が必要な人々を救うまでこの場を動かないという決意の表れとされています。

その他、角材の板を井桁(いげた)上に積み重ね、立面中央をしぼって自然の岩をシンプルにデザインした台座は「瑟瑟座(しつしつざ)」(画像下)と呼ばれます。

不動明王の有名寺院

不動明王は、全国の様々な地域で信仰されている仏さまです。

本記事では、その中でも特に有名な3寺をご紹介します。

大本山 成田山新勝寺

大本山 成田山新勝寺は、千葉県成田市にある、真言宗智山派の大本山です。

西暦940年に開山後、現代では毎年1,000万人を超える参拝客を迎えていることで知られています。

新勝寺のご本尊は、空海が自ら一刀三礼(一つ彫るごとに三度礼拝する)の祈りを込めて開眼した不動明王像と伝えられています。

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瀧谷不動尊

瀧谷不動尊は、大阪府富田林市にある、真言宗智山派のお寺です。

西暦821年、空海が国家の安全・国民の幸せを祈るため開山したという歴史があります。

目の見えない老僧が、ご本尊と二童子を日夜礼拝して目が見えるようになったという奇跡が語り継がれており、目の病気にご利益があるとされてきました。

そのようなルーツから「芽の出るお不動さま」としても信仰され、勉学・スポーツ・芸事・商売といった分野でご利益をいただく人も多いようです。

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中野不動尊

中野不動尊とは、福島県福島市にある、曹洞宗のお寺です。

真言宗以外の宗派で、ご本尊が不動明王なのは珍しいですが、これは曹洞宗のお寺を建てる前に不動明王を祀っていたことが理由です。

中野不動尊には、本堂に厄除(やくよけ)不動明王・祈祷殿に眼守(がんしゅ)不動明王・奥の院洞窟内に三ヶ月(みかづき)不動明王という、合計3尊の不動明王が祀られています。

境内は自然に囲まれており、パワースポットとしても人気を集めています。

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まとめ

不動明王は、大日如来の厳しい一面を具現化した姿であり、煩悩を断ち切ってでも正しい道へと導こうとする強い力を持つ仏さまです。

しかし、その心は慈悲深く、すべての人を優しく見守ってくださいます。

様々な現世利益があると信じられている仏さまなので、もし人生の中で「これだけは成し遂げたい!」という強い思いが生まれたときは、不動明王に対して真言を唱え、自らの煩悩や困難を断ち切る力を分けてもらってはいかがでしょうか。

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