こんにちは、画家/イラストレーターの奥田みきです。
昨今、「ジクレー版画」という言葉を聞く機会も多いかと思います。
私も、仏画はデジタルで制作することが多いですので
作品として「ジクレー版画」を使っています。
ジクレー版画と言う言葉は、なんとなく知っていても
詳しくは分からない、と言う方もいらっしゃると思いますので
今回はこのジクレーについてご説明させて頂きます。
【ジクレー】ジクレー版画について
私は絵画の制作には二通りの手法を使っています。
一つはデジタル絵画(コンピューターで絵の制作のソフトを使って描く)で
もう一つはアナログの絵画です。
ジクレー版画はデジタル絵画を「作品化」するになくてはならない技術です。
ジクレーやジクレー版画と呼ばれる技法は
近年のデジタル技術の発達と共に生まれた
新時代の「版画」技法です。
「ジクレー」とは、フランス語で「吹き付け」の意味があり
IRIS社が1980年開発したプリンターが始まりとされています。
最新のデジタル技術を使い、ジクレー版画用に開発された
最高級の素材(紙やキャンバス)にプリントされます。
ジクレー版画が発達した要因の一つに
近年、デジタル絵画を描く作家が増えて来たことも欠かせません。
又、写真家の方の作品販売や、アナログ作家の絵も
「ジクレー」として版画化されることも多くなりました。
特にジタル絵画はアナログと違ってオリジナルはパソコンの中、
つまり、「データー」のために、
これを高級・高性能プリンターで「出力」したものが「作品」になります。
【ジクレー】かつてはシルクスクリーンやリトグラフが主流でした
「版画」というと、かつてはリトグラフやシルクスクリーンが主でしたが、
近年ではデジタル技術の発達によりジクレー版画がメインになっています。
(工房などにより名称が異なる場合もありますが、最近ではジクレーという
名称が多くなってきました)
専門のジクレー版画工房もあり、大手印刷会社でも制作されています。
過去の名画なども大手の印刷会社の制作で
「デジタル複製画」として制作されることも少なくありません。
ジクレー版画は一言で言ってしまうと「上位機種のプリンター印刷」です。
プリンター印刷と言っても、通常良く出回っている家庭用の「染料インク」
というインクではなく、「顔料インク」を使用した高級印刷です。
長期間の劣化が少なく、大変発色が良く高性能で、綺麗な仕上がりになります。
ちなみに私がショップで制作しているジクレー版画は
「特別大判」は専門の工房に発注している高級品ですので、
150年以上退色しないと言われています。
(M・Lサイズのジクレー版画も耐久性インクの使用により、
通常の室内での展示なら80年間退色しないと言われています)
又、シルクスクリーンなどと違い、最初に大量に印刷する必要がなく、
注文生産での版画印刷が可能になったのも利点です。
【ジクレー】ポスターとはどう違う?
「印刷」と聞くと
では、格安で販売されているポスターとどう違うのか?
と思われる方もいることでしょう。
ジクレー版画とポスターの大きな違いを二つ挙げます
① 劣化が少ない
まず一つに、ポスターやポストカードは通常、オフセット印刷で
印刷されています。
(私もショップで扱っているポストカード(現在は制作修了)
やアートプリントという名称で販売しているものは
オフセットか、通常のインクジェット印刷機でプリントされています)
オフセット印刷や、通常のインクジェット印刷機のものは
特別に「耐久性」があるわけではなく
実際に時間が経つと、色褪せや退色がしてしまいます
(もちろん、ジクレー版画といえども直射日光などに当ててしまっては
劣化します)
一方のジクレー版画用の印刷は、大抵の場合「耐久性インク」を
使用している為、劣化が少ないのです。
②作家が一点一点監修している
一般的なポスターなどのオフセット印刷と違い、
ジクレー版画は
「アート作品」
として作家自身が監修を行い、一点一点制作されています。
作者のサインやナンバリングも入り、希少価値もあります。
また、実際に比べてみると、ポスターなどのオフセット印刷と
比べると格段に綺麗な仕上がりになっています。
現在では一般的な版画技法として認知されており、
ルーブル美術館、メトロポリタン美術館などでも
ジークレー作品が展示されることもあるそうです。
【ジクレー】紙についてジクレー版画の紙について
ジクレー版画ではアナログの時に使われる、
キャンバス地や水彩紙、和紙など
ジクレー印刷に適した専用の紙も多数開発されて来ました。
通常のアナログ用紙とは違い、表面に特殊加工が施されており
アナログの風合いを持つ紙でも、美しい印刷が可能になったのです。
和紙
私は仏画をメインにジクレー版画を制作していると言うこともあり、
印刷には和紙を使用しています。
和紙は洋紙に比べ薄いですが強度があり、寿命も比較的長いとされています。
シックで落ち着いた、手書きの様な再現が出来る為、私は和紙を好んで使っています。
私も使用している、和紙の専門会社
「アワガミファクトリー」
アワガミファクトリーは和紙の製造メーカーです。伝統的な技術を活かしつつ新しい技術も積極的に取り入れ、現在のライフスタイル…
【ジクレー】デジタル制作とアナログ制作
デジタル絵画
デジタル制作について、軽く触れておきます。
デジタル絵画は、コンピューターで制作したものです。
最近私の仏画などをは、このデジタルでの制作がメインになっています
デジタルというと、描かれたことのない方は「それってどんなもの?」と
疑問を持たれる方もいらっしゃいますが
私の場合アクリル絵の具で描いたものと手順が似ています。
(塗り重ね、明るいところ、暗いところを塗り重ねて行く)
これをコンピューターという「画材」で描いているだけで、
結局の所はアナログでも、デジタルでもやはり「絵を描く」ことに違いはありません。
仏画は細かい装飾も多い題材ですので、仏画とデジタルは相性が良いと思っています。
実際デジタルでの制作によって、細部まで手を入れることが細かい装飾も描く事が出来ます。
(ちなみに、ペンタブレットという、こういう機材を使っています。
試用ソフトはクリップスタジオ+最後の仕上げがPhotoshopです)
アナログ絵画
一方のアナログは主にアクリル絵の具を使用していてますが、
こちらは原画オンリーの「一点物作品」になります。
つまり、世界に一点つだけのオリジナル作品と言うことです。
アナログは絵の具の厚みや風合いなど、やはり一点物の
存在感がありますが
例えば上記の作品ですと、オーダー制作で描いた絵で
B2サイズ(号数で20号程度)の大きめの作品です。
一点物の為、制作費が40万円程になってしまいます。
ジクレー版画で同等のサイズですと、7~10万円と
原画に比べるとお手頃な価格で制作出来ます。
まとめ
ジクレー版画の説明と、最後にアナログ絵画との説明も少しさせて頂きました。
アナログの一点物はやはり迫力がありますが、高価な物になってしまうため
私が運営している「アートショップ・観稀舎」でもジクレー版画のを
お求めになる方は多いです。
ジクレー版画は複製画ですが、作家が真心を込めて、
一点一点監修しているという点は
変わらないと思います。