皆さま、こんにちは。幻想画家の奥田みきです。
今回は五穀豊穣と商売繁盛の神様「宇迦之御魂神」の秘密についておおくりします。
日本人の暮らしに深く根付く「お稲荷さん」。
そのルーツは、日本神話に登場する女神「宇迦之御魂神」にありました。
この記事では宇迦之御魂神のルーツ、ご利益、そしてキツネとの関わりについて解説します。
- 宇迦之御魂神ってどんな神様?
- なぜ「お稲荷さん」と呼ばれるようになったの?
- どんなご利益があるの?
- 暮らしの中で宇迦之御魂神を感じられる場所は?
この記事を通じて、宇迦之御魂神のルーツやご利益、そして私たちの生活との関わりについて理解を深め、より身近に感じていただければ嬉しいです。
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)とはどんな神様?
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)は、日本神話に登場する女神です。
名前の「宇迦」は、穀物や食物という意味があり、稲の精霊を表す言葉でもあります。
また「御」は神聖を意味し、「魂」には精霊という意味があります。
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)という名称には、これらの意味を合わせて「稲に宿る神聖な精霊・神様」という意味が込められています。
この名前の由来の通り、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)は、八百万の神の中でも代表的な食物神です。
日本最古の歴史書とされる『古事記』の宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)は、スサノオとオオイチヒメの子どもとされ、『日本書紀』では、イザナギとイザナミが大八島を作った後に「飢えをしのぐために宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)を産んだ」と記されています。
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)とお稲荷さんの関係
冒頭でもお伝えしました通り、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)は、五穀豊穣の神様として信仰されてきた経緯から、いつしか「お稲荷さん」として親しまれるようになりました。
お稲荷さんの発祥の経緯
お稲荷さんの発祥は、全国の稲荷神社の総本宮で、京都市にある「伏見稲荷大社」です。
当時の地方豪族の秦(はた)氏は、伊奈利(いなり)と呼ばれる神様を信仰していました。
この伊奈利に五穀豊穣の逸話があることから、「稲がなる神様」として知られるようになり、全国に広がる稲荷信仰のルーツになったと言われています。
お稲荷さんの主祭神は誰?
さて、総本宮の伏見稲荷大社をはじめとした多くの稲荷神社は、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)を主祭神としています。
しかし厳密には、宇迦之御魂神とお稲荷さんは「同一視されている別の神様」という説もあります。
実は「稲荷神」という名称は、古事記や日本書紀には登場しません。
稲荷神として宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)の名前が最初に記された時期は、古事記が書かれた奈良時代より500年ほど後の、室町時代以降です。
このことからウカノミタマノカミ(宇迦之御魂神)は、「お稲荷さんの別名や同一の神様」というよりも、その特徴やご利益が似ているため「同一視されるようになった」と考えられているのですね。
それでも先ほどご紹介したように、稲荷神社の主祭神として宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)が祀られていることも多いため、お稲荷さんにお参りに行く際は、必然的に宇迦之御魂神にご挨拶をすることになるでしょう。
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)の別名
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)は、書物によって様々な別名で呼ばれています。
その一例を以下にご紹介します。
- 倉稲魂命(うかのみたまのみこと)…『日本書紀』の宇迦之御魂神の別名
- 厳稲魂女(いつのうかのめ)…『日本書紀』にて神武天皇の祭祀の際に供物につけた神名
- 御倉神(みくらのかみ)…『御鎮座伝記』にて「御倉神の三座は、スサノオの子、ウカノミタマ神なり。」と記されている
- 三狐神(さぐじ)…天照大神や天皇の食事を司る食物神のうち、宇迦之御魂神に当てられた別名
いつでもご飯を食べられる時代ではなかった近代以前は、食事は命に関わる大事なものでした。
そんな日本人の主食であるお米(稲作)の神様である宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)は、信仰の対象になりやすく、似たご利益の神様と一緒に親しまれてきたため、別名やお稲荷さんのように同一視される神様も多く存在しているのですね。
稲荷神と荼枳尼天(だきにてん)の関係は?
稲荷神と荼枳尼天(だきにてん)の関係は、日本の宗教的な背景において興味深いものです。
神道の稲荷神は、五穀豊穣や商売繁盛を司る神様として知られており、特に白い狐を使役することで有名です。
一方、荼枳尼天は仏教の女神です。
これら二つの神様は、狐という共通の要素を持っていることから、日本ではしばしば混同されたり、同一視されることがありました。
荼枳尼天(だきにてん)については下記で別途記事にしています。
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)のご利益は?/
ここからは、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)の主なご利益について見ていきましょう。
五穀豊穣
宇迦之御魂神は、稲や穀物、ひいては食物の神様として日本神話に登場したことから、主なご利益は「五穀豊穣」です。
特に洋食文化が入ってくる以前の、神道が今よりもっと身近だった時代では、稲荷神社が全国に3万社も建てられるほど、たくさんの人々に信仰されていました。
商売繁盛・産業振興
本来は穀物の神様である宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)ですが、時代が進むにつれて神様の解釈やご利益の需要が多様化され、次第に商業や工業の神様としても信仰されるようになりました。
稲荷神を信じた商人たちが次々と成功を収めていったことが、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)に商売繁盛のご利益を持たせたきっかけとされています。
デパートの屋上や工業ビルの敷地内などで、小さな稲荷神社を見かけたことはないでしょうか?
そのお社には、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)が祀られていることが多くあります。
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)の縁の神社は?
続いては、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)を主祭神とする神社のうち、有名な神社や縁のある神社を3社ご紹介します。
伏見稲荷大社(京都府京都市)
伏見稲荷大社(ふしみいなりたいしゃ)は、京都市伏見区深草にある、全国約3万社の稲荷神社の総本宮です。
「千本鳥居」と聞くと、情景がパッと思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
711年に建立されて以来、1300年以上もの歴史をもつ、由緒正しい神社です。
小津神社(滋賀県守山市)
小津神社(おづじんじゃ)は、当時の豪族の小津氏を祀る神社として建てられ、後に宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)が主祭神として祀られるようになりました。
小津神社の本殿には、平安時代に作られたとされる重要文化財の「木造宇迦乃御魂命坐像」が安置されています。
小俣神社(三重県伊勢市)
小俣神社(おばたじんじゃ)は、伊勢神宮の豊受大神宮の摂社です。
こちらも宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)が御祭神として祀られ、地元では「稲女(いなめ)さん」として親しまれています。
「宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)のご利益を授かりたい」と感じられた方は、今ご紹介した縁の神社をぜひ参拝してみてください。
まとめ
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)は、日本神話では五穀豊穣の神様ですが、現代では親しみを込めて「お稲荷さん」と呼ばれたり、商売繁盛や家内安全など様々なご利益を授かることができたりと、私たちの日常生活に深く根付く、身近な神様でもあります。
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)に興味を持ってくださった方は、ぜひお近くの稲荷神社をお参りして、ご挨拶と日頃の感謝の気持ちを伝えてみてくださいね。
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