こんにちは、幻想画家の奥田みきです。
あなたは、千手観音菩薩について知っていますか?
「千の手と千の目を持つ観音の王」と呼ばれるこの仏様には、多くの人々が興味を持っています。
そこで今日は、千手観音菩薩についてご紹介します。
イラストもたくさん用意しているので、ぜひ最後までお楽しみください。
また、菩薩全般についても解説していますので、他の菩薩に興味がある方はぜひご覧ください。
【ブログ内の画像の転載・無断使用はご遠慮ください】
- 1. ~千手観音 菩薩とは~
- 2. 千手観音はどうして千本もの手が必要だったのか?
- 3. 千手観音は観音の王と呼ばれる
- 4. 千手観音とは~手の数
- 5. 千手観音の手がが40本の理由
- 6. 千手観音・腕の数の数え方「多臂」
- 7. 海外の千手観音像
- 8. 千手観音像・顔の数
- 9. 千手観音像、頭上の27面の意味
- 10. 千手観音とは・眷属は誰?
- 11. 千手観音菩薩のご利益
- 12. 千手観音の真言
- 13. 千手観音の有名寺院
- 14. 千手観音・手に持っているものを「持物(持物)と呼ぶ
- 15. 千手観音の持ち物(持物)の順番
- 16. 千手観音菩薩~手に持っているもの・持物の詳細・1~
- 17. ~千手観音~手にもっているもの・持物の詳細・2~
- 18. 千手観音~手にもっているもの。持物の詳細・3~
- 19. 千手観音~手に持っているもの・持物の詳細・4~
- 20. 千手観音~手に持っているもの・持物の詳細・5~
- 21. まとめ
- 22. 仏画|ジクレー版画通販はこちら
~千手観音 菩薩とは~
正式名は「千手千眼観自在菩薩」
千手観音は救いを求める人が、本当に何が必要なのか見極め、救済して下さる仏さまです。
千手観音菩薩はインドで十一面観音菩薩、不空羂索観音の次に成立されたと考えられます。
千光観音、千臂観音、など経典によって様々な呼ばれ方をしますが、正式名称を「千手千眼観自在菩薩」と言います。
「千手」は分かるけれど、「千眼」は千の眼?!
千手観音は千の眼を持つ
そうなんです。
千手観音菩薩の千の眼、と言っても顔に千個の眼がある訳ではなく、千の手に眼がついています!
一つ、持物(手に持っている法具)を持っていない手のイラストがあるので、拡大してみますと…
やはり、手のひらに眼がついていますね!
この眼はどんな人々も余すことなく見守るために付いています。
もちろん、あなたのこともこの眼で見守ってくれているのです。
千手観音はどうして千本もの手が必要だったのか?
どうしてそんなに沢山の手が必要なの?
そ人々の想いや苦しみは千差万別なので、一つの手段では救済することが難しいですよね。
例えば、体調の悪い人もいれば、
人間関係で悩んでいる人もいる…。
そんな人も千手観音にかかれば、「千の手」の中からあなたに合った救済方法を探し、救済してくれるのです。
つまり、千手観音菩薩はどんな場面においても人々を救うことが出来るようにと、ありとあらゆる救済の手段を生み出し、千の手を持つようになったのです。
千手観音は観音の王と呼ばれる
千手観音は最強の観音様であることから、「観音の王」や「蓮華王」とも呼ばれています。
千は無限を表しているそうで、広大無限の力を発揮することが出来るのが千手観音なのです。
千手観音の成立には、インドの神の影響
沢山手があると言えば、インドの神様を連想する方も多いと思います。
実際、千手菩薩菩薩の成立にあたっては、千の目や手を持つとされたインドのシヴァ神やインドラ神などの影響もあるとされています。
千手観音の三昧耶形は開蓮華
三昧耶形(さんまやぎょう)は開蓮華です。
三昧耶形ってなに?
三昧耶形とは、密教でその仏を表す象徴物のことです。例えば地蔵菩薩が持っている、如意宝珠などもそうです
千手観音とは~手の数
千手観音は「千の手」を持つとと言われていますが日本では一部の作例を除き、千本ではなく
「40本の手」で造形されます。
(正面の合掌を含めると42本です)
さて、それはなぜでしょうか?……。
計算が合わないよね? どうして?
千手観音の手がが40本の理由
千手観音菩薩の腕がなぜ、40本で造形されているかといえば、一本の手で25の世界を救うとされているからです。
つまり、40×25=で1000本なのです。
通常の千手観音像は前記の様に40の手で作られていますが、これは実際に千本の腕を作る事が難しかった、と言うこともあります。
(特に仏画ではスペースが限られているので、よほど大きな絵でもないと千本の腕を描くことは難しいでしょう)
千手観音菩薩・実際の千本の作例もある
さて、それでは千手観音像で、実際に千の手を持つ仏像がないかと言えば……。
あります! 本当に千の手で作られている千手観音像もあります
有名な大阪府の葛井寺や奈良の唐招提寺の千手観音像は、千本以上の手を持っています。
(葛井寺の千手観音像も、造形的に肩から千の手を出すことは難しかったようで、後ろから見ると手を背負う形になっています)
千手観音・腕の数の数え方「多臂」
千手観音菩薩は日本の仏像の中でも、最も多くの手を持つ仏像です。
仏教には多くの腕を持つ仏さまが登場しますが、これらは「多臂」と呼ばれます。
例えば八本の腕を持つ仏像を「八臂(はっぴ)と呼ばれるように、本数に「臂」がつく感じです。
4本腕でしたら、四臂(よんぴ)ですよね。
ちなみに「臂」は腕のことを言います。
下記の「如意輪観音菩薩」も8本の腕があり、八臂(はっぴ)です。
海外の千手観音像
ちなみに、タイや中国などの千手観音は、小さな手が扇や孔雀の羽のように広がっている作例もあります。
これはまた日本の千手観音像とは違う趣で、とても美しいです!
千手観音像・顔の数
千手観音菩薩は頭上にも11面が配置されています。
頭上の十一面からも全方位を見守っているのです。
この十一面像は、十一面観音と同じですが、
実は本来は27面だそうです!
千手観音像、頭上の27面の意味
27面は、十波羅密(じっぱらみつ)という、悟りへの実践手段の数を表しています。
京都・法性寺/千手観音立像は27面の千手観音菩薩です。
※内部を拝観する場合には、事前に申請が必要です。
私の描いたこちらのイラストは11面で描きました。
千手観音とは・眷属は誰?
千手観音菩薩の眷属は二十八部衆(にじゅうはちぶしゅう)です。(眷属とは部下のようなものです)
天部の最高位である帝釈天(たいしゃくてんおう)大梵天王(だいぼんてんおう)もここに属します。
他にも二十八部衆で有名なのは阿修羅(あしゅら)や毘沙門天(びしゃもんてん)、迦楼羅(かるら)などの名が上げられます。蒼々たる顔ぶれですね。
さすがに観音の王!! 眷属も凄い。ちなみに僕、せいたか童子は不動明王の眷属です
千手観音菩薩のご利益
所願成就、縁結び(恋愛や仕事関係の付き合い)、除災、眼病、
また、子年の守り本尊でもあります。
千手観音の真言
オンバザラタラマキリク
千手観音の有名寺院
千手観音菩薩は各所に有名な仏像があります。
大阪・葛井寺の千手観音像
まずは先ほどもご紹介した、実際に千本の腕がある、葛井寺の千手観音像。
40本の大手と、1001本の小手と合わせて1043本の手を持っておられます。
座像でお顔は繊細で、大変美しいお姿です。
奈良・唐招提寺の千手観音像
奈良の有名な唐招提寺。高さが5メートル以上ある千手観音像は圧巻のお姿です。
大手42本、小手911で合計で953本の腕を持っていますが、本来は千本あったとされています。
京都・三十三間堂の千手観音像
こちらも京都を代表する寺院ですね。
千体の仏像に囲まれた中心に安置されているのが千手観音像の坐像で「中尊」と呼びます。
千体の千手観音はそれぞれ違った時代に作られている為に、少しずつ時代の特徴も異なっていますので、じっくり観賞してみてください。
千手観音・手に持っているものを「持物(持物)と呼ぶ
千手観音の手を見ると、殆どの手に何か持っている事にお気づきになると思います。
これらを「持物(じもつ)」と呼びます。
以下では図を使って千手観音の持ち物を、一つずつご説明します。
私自身が実際に絵を描いてみて疑問に思ったことなどを、仏師の先生に教えて頂いたり調べたものです。
千手観音の持ち物(持物)の順番
千手観音は持物の順番は決まっているのですが、仏像は作例によって位置が異なります。
それは「第一手には宝珠を持ち」というのは決まっていても、仏像の工房によって、どれを「第一手」とするかが、違っていたからなのです。
例えば、手を奥行き2列で付けるか、3列で付けるかなど、各工房によって違っていて、そのため持物の位置が仏像によってもそれぞれ違っています。
まずは経典に書かれている順番を掲載します。
- 1-宝珠(ほうじゅ)
- 2-羂索(けんじゃく)
- 3-宝鉢(ほうはつ)
- 4-宝剣(ほうけん)
- 5-三鈷(三鈷)-跋折羅(ばさら)とも
- 6-金剛杵(こんごうしょう)
- 7-施無畏印(せむいいん)
- 8-日精摩尼(にっしょうまに)
- 9月精摩尼(げっしょうまに)
- 10-宝弓(ほうきゅう)
- 11-宝箭(ほうせん)
- 12-楊柳(ようりゅう)
- 13-白払(びゃくほつ)
- 14-胡瓶(こへい)
- 15-傍牌(ぼうはい)
- 16-鉞斧(えつふ)
- 17-玉環(ぎょくかん)
- 18-白蓮花(びゃくれんげ)
- 19青蓮花(しょうれんげ)
- 20宝鏡(ほうきょう)
- 21-紫蓮花(しれんげ)
- 22-宝篋(ほうきょう)
- 23-五色雲(ごしきうん)
- 24-唐瓶(からびん)=胡瓶(こへい)
- 25-紅蓮華(ぐれんげ)
- 26-戦鞘(せんしょう)
- 27ほら貝
- 28-ドクロ
- 29-数珠(じゅじゅ)
- 30-宝鐸(ほうたく)
- 31-宝印(ほういん)
- 32-倶尸鉄 鈎(くしてつこう)
- 33-錫杖(しゃくじょう)
- 34-合掌(がっしょう)
- 35-化仏(けぶつ)
- 36-宮殿(きゅうでん)
- 37-宝経(ほうきょう)
- 38-金輪(こんりん)
- 39-頂上化仏(ちょうじょうけぶつ)
- 40-葡萄(ぶどう)
以上が経典での順列になります。
千手観音菩薩~手に持っているもの・持物の詳細・1~
ここから先は私の絵でのご説明になります。私はとある仏画の持物の位置を参考に作画しました。
千手観音の持ち物、まずは中央からです。
1.合掌
正面で合掌している手です。
2.宝鉢(ほうはつ)
腹部の病を取り除いてくれる。鉢とは修行者の使う食器の事です。
千手観音はこの鉢に、食べ物を呼び寄せることが出来るとも言われています。
3.紫蓮華(れんげ
蓮の花です。観音菩薩の多くが持っています。
4.白蓮華(びゃくれんげ)
蓮の花です。観音菩薩の多くが持っています。
蕾の状態は修行中の菩薩を表します。
この蕾の状態は作者の解釈によって、開いた状態にものもあります
~千手観音~手にもっているもの・持物の詳細・2~
千手観音の持ち物、画面の左上になります。
5.錫杖(しゃくじょう)
地蔵菩薩が持っている杖です。
この法具の「シャンシャン」と言う音は、人々の心に善心を呼び起こします。
6.跋折羅(ばさら)
両端が三つ又になった杵です。仏法を守り煩悩を打ち砕く法具です。
金剛杵(こんごうしょ)とも呼ばれ、元はインドの武器でした。
蔵王権現など多くの仏さまが持っています
(金剛杵には先が三つになった、三鈷杵(さんこしょ)。
五つになった五鈷杵(ごこしょ)、
一つの独鈷杵(どっこしょ)などがあります)
7.宝印 (ほういん)
優れた弁説が出来る力を与えてくれます。
8. 金輪(こんりん)
仏敵を打ち砕き、煩悩を打ち砕く法具です。
9. 月精摩尼
熱や毒を消す宝の珠です。月輪(がちりん)ともよばれます。
月光菩薩の持物です。
10. 化仏(けぶつ)
小さな如来、観音菩薩の化仏は阿弥陀如来です。
11.五色雲(ごしきうん)
仏の智慧を象徴する五色の雲。
不老不死を得るとされています。
12.青蓮華(しょうれんげ)
極楽浄土の象徴です。
千手観音が手に持っている蓮は全部で4色で「白、青、紫、紅」です
千手観音~手にもっているもの。持物の詳細・3~
千手観音菩薩の持ち物、画面の左下になります。
13.宝経(ほうきょう)
経典や仏典のことです
14.葡萄(ぶどう)
たわわに果実を実らせる事から、五穀豊穣のご利益があるとされています。
15.宝剣(ほうけん)
あらゆる邪を断ち切る。柄が三つ叉に分かれています。
16.楊柳(ようりゅう)
体のあらゆる病を治し、幸福を授けてくれる。
三十三観音で楊柳観音もいらっしゃいます。
17.念珠(ねんじゅ)
間が持つ、108の煩悩を断ちきる力を与えてくれます
18.宝箭(ほうせん)
宝弓と対をなします。良き友に巡り合れるとされる矢です
19.鉞斧(えつふ)
鉄斧(てっぷ)とも呼ばれます。
役人の難から逃れることが出来る法具です。
20.髑髏杖(どくろじょう)
一切の悪を降伏させる法具です。
命の大切さをあわらす縁起物でもあります。
21.軍持(ぐんじ)
水瓶(すいびょう)、澡瓶(そうびょう)とも呼ばれます。
功徳のある水が入っています。
22.施無畏印(せむいいん)
仏さまの印相の一つです。
何も持たない手は、人々に「恐れることはない」と伝えています。
千手観音~手に持っているもの・持物の詳細・4~
画面右上
千手観音の持ち物、画面の右上です
23.戟鞘(げきしょう)
三叉戟(さんさげき)とも言われ、
毘沙門天や増長天、一部の明王の持物でもあります。
仏敵を追い払う武器ですが、五穀豊穣を授ける法具でもあります。
24.金剛杵(こんごうしょう)
三叉戟(さんさげき)とも言われ、
毘沙門天や増長天、一部の明王の持物でもあります。
仏敵を追い払う武器ですが、五穀豊穣を授ける法具でもあります。
25.宝鏡(ほうきょう)
広大な智慧を得る事が出来きます。
26.宝篋(ほうきょう)
篋は経典を入れる箱のことです
冥福を授ける法具です。
地中に隠れた宝を授けてくれます。
27.玉環(ぎょくかん)
良き人間関係を与えてくれ、優れた人材をあつめます。
28.日精摩尼(にっしょうまに)
熊野権現のお札で知られる、三本足のカラス。
闇を照らす法具で、日光菩薩の法具です。日輪とも呼ばれます。
29.頂上化仏(ちょうじょうけぶつ)
大きさが小さい為に「化仏」と同じに表現されることが多いですが、化仏と描き分ける場合には頂上化仏が布で手を隠していて、
阿弥陀印相が化仏になります。
30.宮殿
浄土にある宮殿に導いてくれます。
福寿、円満を授けてもくれます
31.紅蓮華(ぐれんげ)
天上に通じる慈愛の象徴です。
開いた蓮は悟りを開いた如来を象徴します。
32.宝弓(ほうきゅう)
良縁を得ることが出来る。出世をかなえる。
弁才天、愛染明王の持ち物でもあります。
33. 法螺(ほうら)
悪霊を退散させ、善神を呼び寄せてくれます。
千手観音~手に持っているもの・持物の詳細・5~
千手観音の持ち物、画面右下になります。
34.宝珠(ほうじゅ)
如意宝珠とも呼ばれる不思議な珠です。
災いを取り払い願いを叶えてくれます。
35.傍牌(ぼうはい)
魔を追い払う盾。
龍や霊獣が描かれています。除災の功徳があります
36.白払(びゃくほつ)
払子(ほっす)とも。
はたきの形をした法具で、煩悩や障害を追い払ってくれます
37.羂索(けんじゃく)
苦しむ人々を救う。
五色の紐で作られており、不空羂索観音や不動明王の持ち物。
38.倶尸鉄 鈎(くしてつこう)
先端が直角に曲がった棒状の武器
龍神を操るともされています。
39.宝鐸(ほうたく)
美声を与えてくれます。
五鈷鈴(ごこれい)を持つこともあります。
(五鈷鈴は持ち手の部分が五つに分かれているものです)
40.胡瓶(こへい)
唐瓶とも。
注ぎ口が鳥の頭の形をしている、ペルシャ風の水差しです。
人間関係の和合を授けてくれます。
まとめ
画像が多くなりましたが、千手観音菩薩の一つ一つの法具にはこんな意味があるんだ!
と思って鑑賞して頂けると面白いと思います。
沢山の功徳を与えて下さる仏さまと言うだけではなく、仏像や仏画としてもとても美しい千手観音菩薩です。
千手観音の仏像は沢山の作例があり、各所の寺院に奉られていますので目にする機会も多いかと思います。
是非お寺や博物館で、じっくりとお参りしてくださいね!
(ちなみに、造形としてじっくり観察したい場合には寺院ではなく「博物館」がお薦めです)
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