こんにちは。幻想画家の奥田みきです。
今回は、日本神話に登場する木花開耶姫(このはなのさくやびめ)という神様について、
「どんな神様なの?」
「どんなご利益があるの?」
「祀られている神社は?」
といった疑問に、神話のストーリーを交えながら分かりやすくお答えしていきます。
美しい女神さまらしいね! たのしみ!
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)とはどんな神様?
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)は、神話の世界においても「絶世の美女」と謳われる女神様です。
「女神」と聞くと、どこか絶対的で欠点のない存在のように思う方もいらっしゃるかと思います。
しかし日本神話には、美人ゆえの苦労や女性としての強さが描かれていたりと、どこか人間臭くもあり、そしてやはり神様らしく尊敬の念を感じられる一面もあります。
そんな木花開耶姫(このはなのさくやびめ)について、知っておきたい基本知識と魅力をご紹介します。
絶世の美女と謳われる
木花開耶姫(このはなのさくやびめ))は、アマテラスオオミカミ(天照大神)の天孫であるニニギノミコト(瓊瓊杵尊)の妻であり、絶世の美女と謳われる女神です。
漢字で「木花開耶姫」と表記されることもあるように、満開の花のように美しく、そして短命だったこともあり、まさに「美人薄命」な生涯を歩んだ神様でもあります。
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)・桜が名の由来
華やかさと儚さを兼ね備えた花といえば、誰もが桜を連想するのではないでしょうか。
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)の美しさは、
「桜のように美しいのではなく、桜がサクヤビメの美にあやかった」
と言われています。
さて名前ですが
古事記での表記
- 本名:神阿多都比売(かむあたつひめ)
- 別名:木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)と記載されています。
日本書紀での表記
- 本名:神吾田津姫(かみあたつひめ)
- 別名を木花開耶姫(このはなのさくやびめ)と記載されています。
日本の神様の名前はこのように色々あるので少し分かりづらいですよね。
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)・ニニギノミコトとの婚姻
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)の輝くばかりの美しさは
美しい女神たちに囲まれて育ったニニギが一目惚れしたほどだったとされています。
そんな木花開耶姫(このはなのさくやびめ)について知っておきたい有名なエピソードについて、『婚姻』と『出産』に分けてお話していきます。
木花開耶姫(このはなのさくやびめ))は、出会ってすぐに一目惚れしたニニギと婚姻します。
しかし、父親であるオオヤマツミノカミ(大山津見神)は、サクヤビメの姉のイワナガヒメ(磐長姫命)も一緒に嫁がせることにしたのです。
イワナガヒメの容姿は、木花開耶姫(このはなのさくやびめ)とは対照的で醜かったといいます。
その容貌に耐えかねたニニギは、イワナガヒメを父親のもとに送り返し、オオヤマツミを激怒させてしまいます。
それでどうなったの?
オオヤマツミは実はある誓約を立てて娘を差し出していました。
その誓約とは……。
「サクヤビメがニニギを花のように繁栄させますように」
「イワナガヒメがニニギの繁栄を岩のように盤石にしますように」
というものでした。
歴代天皇の寿命が短くなった訳
恩を仇で返されたことに怒ったオオヤマツミは、「天孫(ニニギ)は短命になるだろう」と告げました。
この出来事から、本来なら永遠の命を手に入れられるはずだったニニギを始め、
その子孫とされる歴代天皇の寿命は、人と同じ(神様からすると短命)になってしまったといいます。
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)が美人だったから、というよりも、ニニギの容姿に対する執着が招いた悲劇であり、神様でありながらどこか人間らしくもあるエピソードです。
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)の火中出産
オオヤマツミの怒りを買ってしまったものの、ニニギとコノハナノサクヤビメ(木花之佐久夜毘売)はめでたく夫婦となりました。
しかしここでも、ニニギの疑惑があるトラブルを招きます。
何と木花開耶姫(このはなのさくやびめ)は、ニニギとの初夜で子どもを身ごもったのです。
ニニギは「たった一夜で子を授かるはずがない」と、妻の不貞を疑います。
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)ここで芯の強さをみせ、
夫に疑いの目を向けられたコノハナノサクヤビメ(木花之佐久夜毘売)ですが、ここで身の潔白を示すために芯の強さを垣間見せます。
コノハナノサクヤビメ(木花之佐久夜毘売)は自身への疑いを晴らすため、産屋に入って火を放ち、「もしニニギの子なら何があっても出産できる」と誓約をしました。
火中出産
そして危険と隣り合わせの状況で、
- ホデリノミコト(火照命)海彦
- ホスセリノミコト(火須勢理命)
- ホオリノミコト(火遠理命)山彦
の三柱の子を無事に火中出産したのです。
美しいのに意思の強い女神さまなんです。
この火中出産は、「私は決して不貞しない」という、女性として、妻として、そして母親としての強さと愛の深さを感じられる、木花開耶姫(このはなのさくやびめ)の有名なエピソードです。
そして優しげな名前と違って、実は結構気の強い女神様だったと言うことも分ります。
ちなみに、この時に産まれた三男のホオリノミコトの孫が、初代天皇である神武天皇とされています。
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)の家系図
さて、ここで一旦木花開耶姫(このはなのさくやびめ)の家系図を整理してみましょう。
このように、アマテラスの孫であるニニギと木花開耶姫(このはなのさくやびめ))の血統が、初代天皇へと繋がっているのが分りますね。
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)の子供達の神話も面白いので、後日また別のページでお話しさせていただきます。
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)のご利益・ご神徳
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)のご利益・ご神徳には、ここまで紹介してきた神話にまつわるものが多数あります。
その中でも代表的なご利益が、安産・子宝・火難避け・酒造・農業などです。
安産・子宝・火難避けは、ここまでお読みくださった方でしたら想像に難くありませんよね。
火中出産を無事に終えた木花開耶姫(このはなのさくやびめ)は、安産や火難避けのご神徳があるとされ、御祭神として祀られている神社でご利益にあずかることができます。
父親のオオヤマツミが奉られる神社とも関連
また父親のオオヤマツミは、木花開耶姫(このはなのさくやびめ)の出産祝いとして、神聖な稲田で米を育てて酒を醸造したとされています。
さらには、木花開耶姫(このはなのさくやびめ)に「お乳の代わりに甘酒を作って子に飲ませた」というエピソードがあったり、オオヤマツミと共に祀られることも多かったため、酒造業や農業に対するご利益もあります。
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)縁の神社
木花開耶姫(このはなのさくやびめ)を祀る神社は多数ありますが、中でも有名な神社は、全国に約 1300 社ある
浅間神社の総本社である「富士山本宮浅間大社」です。
境内には富士山の湧水でできた湧玉池(わくたまいけ)があったり、御神木として約 500 本もの桜が奉納されていたりと、木花開耶姫(このはなのさくやびめ)に特に縁のある神社となっています。
浅間大社の他にも、サクヤビメ縁の神社は様々あります。
子安神社(三重県伊勢市)…伊勢神宮の皇大神宮に祀られている
都萬神社(宮崎県西都市) 日本 … 酒発祥の碑が境内に立っている
木花神社(宮崎県宮崎市)木花開耶姫(このはなのさくやびめ))とニニギの … 行宮(仮の社殿)や火中出産した産屋の跡がある
高千穂神社(宮崎県西臼杵郡高千穂町) 天孫 … 降臨の地でありニニギとともに祀られている
これらの神社が近所にありましたら、木花開耶姫(このはなのさくやびめ)の芯の強さや愛の深さに思いを馳せながら参拝してみると、
神社巡りを新たな視点で楽しめるかもしれませんね。
まとめ
絶世の美女とされながら、美貌ゆえの苦労も絶えなかった木花開耶姫(このはなのさくやびめ)。
しかし、その困難を乗り越えられるだけの勇気と力強さを持ち合わせているところが、神様として末永く信仰され、親しまれてきた理由ではないでしょうか。
もし、ご自身や大切な方に対して安産を祈願する機会がありましたら、ぜひ総本山の浅間大社を参拝して、ご利益にあずかってみてくださいね。