こんにちは。
幻想画家の奥田みきです。
今回は、日本神話に登場する菊理姫(くくりひめ)という神様について、
「どういった神様なの?」
「どんなご利益があるの?」
「菊理媛神を祀る神社はどこ?」
といった疑問や基礎知識について、神話のエピソードや伝承を交えながら分かりやすくご紹介していきます。
菊理姫(くくりひめ)は、伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)という夫婦の神様の口論を仲裁したことで知られ、主に縁結びで有名な神様です。
この記事から、そんな菊理媛神の魅力を少しでも知っていただけましたら幸いです。
菊理姫(くくりひめ)とはどんな神様?
菊理姫(くくりひめ)・菊理媛命(くくりひめのみこと)は、日本神話に登場する女性の神様です。
「日本神話に登場する」といっても、日本最古の歴史書である『古事記』や『日本書紀』には、その名が記載されていません。
菊理姫(くくりひめ)は、日本書紀の注釈や外伝のような役割をもつ『一書(いっしょ)』という書物にて、日本神話の中でも有名な黄泉比良坂(よもつひらさか)での伊邪那岐と伊邪那美の夫婦喧嘩を仲裁したことで知られています。
黄泉比良坂のエピソード
まずは菊理姫(くくりひめ)について知っていただくために、黄泉比良坂のエピソードを簡単にお話しします。
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その昔、伊邪那岐と伊邪那美の夫婦は、国土を作り出す「国生み」と、その国土を営む神々を誕生させる「神生み」をそれぞれ命じられました。
ある日、伊邪那美は、軻遇突智(カグツチ)という火の神様を産んだ際の火傷で亡くなってしまい、そのことを悲しんだ伊邪那岐は、黄泉の国へ妻を迎えに行きました。
しかし伊邪那岐は、恐ろしい姿に変わっていた伊邪那美を見て逃げ出し、伊邪那美は怒って伊邪那岐を追いかけ、2人はこの世とあの世の境目である黄泉比良坂で口論になります。
その時、菊理媛神がどこからともなく現れて2人の言い争いを仲裁し、伊邪那岐は安心して現世に帰ることができました。
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『一書』に記されている菊理媛神のエピソードはここのみで、この時に菊理姫(くくりひめ)が何を言ったのか、一体どこから現れたのかなどは一切書かれていません。
【原文】是時、菊理媛神亦有白事。伊弉諾尊聞而善之。乃散去矣。
【意訳】この時、菊理媛神はあることを申し上げた。伊邪那岐はこれを聞き、菊理媛神を褒めた。そしてその場を去られた。
「いきなり現れ、修羅場とも言える夫婦喧嘩を仲裁し、後に登場することはない」
菊理姫(くくりひめ)はこのように、一瞬ではあるものの名前は確かに記されており、非常に重要な役割を果たしたということから、今でも謎の多い神様とされているのです。
菊理姫(くくりひめ)の別名
菊理姫(くくりひめ)は、全国の白山神社に祀られている「白山比咩神(しらやまひめのかみ)」と同一の神様と考えられていて、参拝者やその地域の人々からは「白山様(はくさんさま)」という呼び名で敬愛されています。
菊理媛神と白山比咩神が同一視されるようになった経緯は現在でも分かっていませんが、全国の白山神社に伊邪那岐と伊邪那美が揃って祀られることが多いため、2人の縁を結び直した菊理媛神と白山比咩神の同一説がささやかれているようです。
龍神との関係は?
また、白山神社の総本宮の白山比咩神社が建ち、日本三大霊山の1つでもある「白山」は、古くから農耕に重要な水が湧き出ることから人々に厚く信仰されてきました。
そうした豊かな水源を司り、豊穣をもたらすという性質から、菊理媛神は龍神と同一視されることもあります。
全国の龍神神社に縁結びのご利益があることも、菊理媛神との興味深い共通点です。
瀬織津姫との関係は?
さらに菊理姫(くくりひめ)は、同じく謎多き神様として知られる「瀬織津姫(セオリツヒメ)」と同一神ではないかと考察されることもあります。
瀬織津姫に至っては「大祓祝詞」という禊の儀式の際に唱える祝詞にのみその名が残され、『古事記』にも『日本書紀』にも一切登場しません。一説によると菊理媛神は、黄泉比良坂で伊邪那岐に「現世に帰ったら
黄泉の国の穢れを祓いなさい」と助言したと考えられています。
「菊理媛神が禊を勧めた」という仮説と「瀬織津姫が浄化の神様」という点が結びつくことで、根拠こそ乏しいものの同一神の可能性が示唆されるのです。
菊理姫(くくりひめ)のご利益
菊理姫(くくりひめ)のご利益は、夫婦仲を取り持ったという逸話から「縁結び」が一般的です。
しかし菊理姫(くくりひめ)には、縁結び以外にも様々なご利益があります。
ここからは、菊理姫(くくりひめ)を祀る神社で預かれる主なご利益についてご紹介します。
縁結び
菊理姫(くくりひめ)の一番のご利益はやはり、黄泉比良坂のエピソードからも分かる通り「縁結び」です。
「くくりひめ」という呼び名には、糸を「くくる」ように人と人の縁を結んだり、願いを離さず引き寄せるといういわれがあります。
そのため男女や夫婦の仲はもちろんのこと、家族の絆を繋ぐ「家内安全」やお金に好かれるよう「金運上昇」を願うなど、人だけでなく物事との縁を結ぶご利益もあります。
安産、子宝
日本神話の女神には「繁栄」を司る神様も多く、特に夫婦円満のイメージのある菊理媛神からは、安産や子宝のご利益を預かることもできます。
菊理姫(くくりひめ)を祀る神社には伊邪那美が一緒に祀られていることも多く、子孫繁栄や子どもの健康長寿を願いたい時は、菊理媛神を祀る神社を参拝してみましょう。
厄除け
水を司る龍神との共通点が多く、瀬織津姫とも類似する菊理媛神には、浄化や厄除けのご利益もあるとされています。
白山様を祀る白山神社には、厄除けで有名な神社も数多くあります。
相性の合わない人とよく出会ってしまったり気分の落ち込みが続く時は、菊理媛神のご神徳にあやかり開運を願ってみてはいかがでしょうか。
菊理姫(くくりひめ)を祀る神社
白山様として敬愛され各地に広まった白山信仰によって、菊理媛神を祀る神社は全国に建立されています。
今回はそうした数々の神社の中から、由緒や知名度のある神社を3社ご紹介します。
白山比咩神社(石川県白山市)
全国3000社の白山神社の総本宮が、霊山・白山の麓に建つ「白山比咩(しらやまひめ)神社」です。
主祭神として、菊理姫(くくりひめ)のほか、伊邪那岐と伊邪那美の二柱も祀られています。
立派なご本殿の景観はもちろんのこと、樹齢800年とされる杉の御神木や、延命長寿の霊水として有名な白山の伏流水、白山信仰の歴史や文化を学べる宝物館など、お参りするだけではもったいなく感じられるほど各所に見どころがあります。
菊理媛神にご縁を感じた方は、ぜひ機会を作り、白山比咩神社に足を運んでみてください。
白山神社(東京都文京区)
都心にお住まいの方は、「東京十社」の1つに数えられ、文京区に鎮座する「白山神社」への参拝もおすすめです。
こちらは主祭神として、菊理媛神、伊邪那岐、伊邪那美の三柱を祀っています。
文京区の白山神社の見どころは、毎年6月に開催される「文京あじさいまつり」です。
境内と隣接する白山公園には、シーズンになると3000株ものあじさいが咲き誇り、コンサートや物産展なども開かれます。
神社とあじさいのコラボレーションを楽しみたい方は、ぜひ旬の時期を見計らって参拝に出かけてみましょう。
揖夜神社(島根県松江市)
「揖夜(いや)神社」は、菊理媛神が伊邪那岐と伊邪那岐の2人を仲裁をした黄泉比良坂の近所にあり、伊邪那美が主祭神の神社です。
菊理媛神は祀られていませんが、日本神話で唯一登場するエピソードの舞台でもある黄泉比良坂は、菊理媛神に思いを馳せるならぜひ足を運んでいただきたいスポットです。
揖夜神社で伊邪那美から預かれるご利益は、縁結びや家内安全、子宝など。
日本神話に興味のある方は、揖夜神社で伊邪那美にご挨拶をしたのち、黄泉比良坂にも訪れてみてください。
まとめ
菊理姫(くくりひめ)は、『一書』といわれる『日本書紀』の注釈的な話の一文にしか登場しないため、分かっていないことも多い一方で、想像の余地が広く考察や余韻を楽しめる神様でもあります。
そしてなんと言っても、伊邪那岐と伊邪那美の修羅場を好転させたことから、縁結びや願望成就の御力も強力です。
心から叶えたい願いがある方や、菊理媛神に興味を感じてくださった方は、ぜひ今回ご紹介した神社へご挨拶に出かけてみてくださいね。
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