日本神話に登場する男神とは?
日本神話には、国づくりや天孫降臨、そして英雄譚に登場する多くの男神(おがみ)が記されています。
荒ぶる海を鎮めた武の神、天地創造に関わった始源神、自然や農耕を司る神々──
その姿はときに厳しく、ときに優しく、時代を超えて私たちの信仰と結びついてきました。
この記事では、古事記や日本書紀に登場する代表的な男神を中心に、
天上・地上・自然・英雄の系譜に沿ってご紹介します。
まずは、特に有名な男神10柱からご覧ください。
代表的な男神10柱
| 神名(読み仮名) | 象徴・特徴 |
|---|---|
| 伊邪那岐命(いざなぎのみこと) | 国生みの父神。多くの神々を生んだ創造神。 |
| 須佐之男命(すさのおのみこと) | 海と嵐の神。八岐大蛇を退治した荒ぶる英雄神。 |
| 大国主命(おおくにぬしのみこと) | 国造りと縁結びの神。出雲神話の中心的存在。 |
| 建御雷神(たけみかづちのみこと) | 雷と剣の神。国譲り神話で活躍する武神。 |
| 瓊瓊杵尊(ににぎのみこと) | 天孫降臨の主神。皇統の祖とされる存在。 |
| 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ) | 天地開闢に最初に現れた宇宙の中心神。 |
| 猿田毘古神(さるたひこのかみ) | 道案内の神。天孫降臨を先導した守護神。 |
| 思金神(おもいかねのかみ) | 知恵と策の神。岩戸神話で活躍した思慮深い神。 |
| 武御名方神(たけみなかたのかみ) | 力の神。諏訪大社に祀られる地方の英雄神。 |
| 日本武尊(やまとたけるのみこと) | 東征で知られる日本武尊。剣と変身の力を持つ英雄。 |


創造の神・別天津神(ことあまつかみ)|天地開闢と宇宙の秩序を司る神々
天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
- 属性:宇宙の中心神・始源神
- 概要:天地開闢の最初に現れた神。高天原の最も奥に位置する「見えざる至高神」とされる存在で、造化三神の筆頭。
- 意味:宇宙意識・調和・魂の根源とつながる力を授ける。
高御産巣日神(たかみむすひのかみ)
- 属性:創造・生成・発展の神/
- 概要:造化三神の一柱で、生成する力の象徴。のちに天孫降臨を導き、国譲りにも深く関与する。
- 意味:物事の発展・繁栄・成長をもたらす神。
神産巣日神(かみむすひのかみ)
- 属性:生命の誕生・再生の神
- 概要:高御産巣日と対になる神で、スクナヒコナ命を再生させた逸話を持つ。豊穣や医療とも深く関係する。
- 意味:命の循環・癒し・農耕の守護。
国常立神(くにのとこたちのかみ)
- 属性:国土の根源神・大地の神
- 概要:地の最初に現れた神で、大地を支える柱のような存在。名は「国に常に立つ神」に由来する。
- 意味:安定・土台作り・土地守護。
宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)
- 属性:生成の気配をもつ神・萌芽の神
- 概要:天地開闢の初期に現れた神で、まだ具体性を持たない“いのちの兆し”の象徴とされる。
- 意味:新たな始まり・若さ・創造の息吹。
天之狭霧神(あめのさぎりのかみ)
- 属性:霧・雨・気象の神
- 概要:高天原の始源神のひとりで、空を覆う霧の気配として現れた存在。霧は神秘の象徴とされ、天と地のあいだをつなぐ“気”とも捉えられる。
- 意味:目に見えない導き・曖昧さを超えて真実へ進む力。


武神・軍神|剣と雷、国譲りに活躍した戦いの神々
建御雷神(たけみかづちのかみ)
- 属性:雷神・武神・剣の神
- 概要:国譲り神話において、大国主命に対し強い姿勢で交渉した武の神。鹿島神宮の主祭神で、剣の化身ともされる。
- 意味:勝負運・武運長久・邪を祓う力を授ける。
経津主神(ふつぬしのかみ)
- 属性:武神・剣の神
- 概要:建御雷神とともに国譲りに関わった神。香取神宮の主祭神で、物事を「断ち切る」力を象徴する。
- 意味:決断力・開運・災厄を断ち祓う。
天之忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)
- 属性:武神・天孫系の神
- 概要:天照大御神の子で、天孫降臨を託された神。最終的に地上へ降りたのは子の瓊瓊杵尊とされる。
- 意味:守護・導き・使命を全うする強さを授ける。
猿田毘古神(さるたひこのかみ)
- 属性:道案内・守護神・国津神
- 概要:天孫降臨の際に、高天原から地上への道を先導した神。大きな鼻と赤ら顔の姿で描かれ、導きの象徴とされる。
- 意味:交通安全・導き・土地守護。
武御名方神(たけみなかたのかみ)
- 属性:武勇神・力の神
- 概要:諏訪大社の主祭神。国譲りの際に建御雷神と力比べをし、諏訪の地にとどまることを選んだ地方の英雄神。
- 意味:力強さ・勝負運・土地とのご縁を結ぶ神。
布都御魂神(ふつのみたまのかみ)
- 属性:剣の霊・武神
- 概要:タケミカヅチ命の持つ剣「布都御魂剣」が神格化された存在。霊剣そのものが神とされ、石上神宮に祀られる。
- 意味:決断・正義・浄化の力。
高倉下命(たかくらじのみこと)
- 属性:武具・霊剣・神意の媒介
- 概要:国譲りののち、建御雷神から霊剣「布都御魂」を託され、神武天皇へ届けたとされる人物神。神と人をつなぐ橋渡し役でもある。
- 意味:天意の伝達・武器の霊力・導きの啓示。


国造り・皇統の神|国土を築き、皇統につながる神々
伊邪那岐命(いざなぎのみこと)
- 属性:創造神・浄化神・神々の父
- 概要:伊邪那美命とともに日本の国土と多くの神々を生んだ父神。黄泉の国から帰還し、禊によって天照大神・月読命・須佐之男命を生んだとされる。
- 意味:創造・再生・穢れを祓う力。


瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)
- 属性:天孫降臨・皇統の祖神
- 概要:天照大神の命を受けて高天原から地上に降り立ち、日向の地に稲穂と共に天孫として君臨した。神武天皇の曾祖父にあたる。
- 意味:繁栄・統治・五穀豊穣。
彦火火出見命(ひこほほでみのみこと)
- 属性:海幸・山幸の神・皇統神
- 概要:海幸彦との兄弟神話で知られる山幸彦。海神の娘・豊玉姫と結ばれ、後に神武天皇の祖となる。
- 意味:良縁・冒険・流れを変える力。
神日本磐余彦尊(かむやまといわれびこのみこと)
- 属性:初代天皇・神武天皇
- 概要:東征を経て大和を平定し、初代天皇として即位した神格化された人物。日本の建国神話を象徴する存在。
- 意味:開拓・統治・始まりの力を授ける。
天穂日命(あめのほひのみこと)
- 属性:外交・国譲り・天孫系の神
- 概要:天照大神の子で、国譲り交渉のために地上へ遣わされたが、大国主命に心を寄せて報告を怠ったとされる。出雲国造の祖。
- 意味:和合・交渉・人とのつながりを円滑にする力。


自然・地の神|山・海・風・火など自然界を司る神々
月読命(つくよみのみこと)
- 属性:月・夜・静寂・統制
- 概要:伊邪那岐命から生まれた三貴神のひとりで、夜と月を司る神。妹の天照大御神とは対をなす存在で、静けさと内省の象徴でもある。
- 意味:内なる気づき・静かな洞察・物事の調和と統制。


須佐之男命(すさのおのみこと)
- 属性:海と嵐・浄化・変革の神
- 概要:伊邪那岐命から生まれた三貴神の一柱。荒ぶる気性を持ちながらも、八岐大蛇を退治し、草薙剣を得た英雄神としても知られる。
- 意味:逆境を超える力・禍を祓う・水と風の浄化。


大山祇神(おおやまつみのかみ)
- 属性:山の神・自然の守護神
- 概要:山の精霊を司る神で、多くの女神の父とされる。農耕・狩猟・木材など山の恵みと関わりが深い。
- 意味:山の加護・五穀豊穣・家族繁栄。
風之大神(しなつひこのかみ)
- 属性:風の神・気の流れを司る神
- 概要:天照大神が岩戸に隠れた際に風を吹かせたとされる。目に見えない“気”や動きを象徴する神。
- 意味:運気の転換・風通し・呼吸の整え。
火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)
- 属性:火の神・鍛冶・破壊と再生
- 概要:伊邪那岐命と伊邪那美命の子で、出産時に伊邪那美を焼いてしまった火の強烈な神。多くの鍛冶神・山神を生んだともされる。
- 意味:変容・浄化・技術と情熱の象徴。
豊玉彦命(とよたまひこのみこと)
- 属性:海の神・深海と変化の象徴
- 概要:海神・綿津見神の系譜に属し、彦火火出見命の義父。神話では「龍宮の王」として登場することもある。
- 意味:水の力・深層意識・遠い記憶の導き。


英雄・地方神|伝説を生きた勇者や土地に根ざす神々
日本武尊(やまとたけるのみこと)
- 属性:武勇・旅・変身の神
- 概要:景行天皇の子。熊襲征伐や東国遠征で数々の武勇を示したが、その命ははかなく、のちに白鳥となって昇天したと伝えられる。
- 意味:挑戦・自己変容・旅の守護。
饒速日命(にぎはやひのみこと)
- 属性:異系天孫・武の神
- 概要:天津神として地上に先に降りた存在。物部氏の祖神とされ、ニニギ命とは異なる系統を持つ「もう一人の天孫」とも呼ばれる。
- 意味:異なる視点・改革・古代豪族の守護。
建多乎利命(たけたおりのみこと)
- 属性:地方豪族神・鍛冶の祖
- 概要:東国の製鉄伝承に登場し、鍛冶・武器づくりの神として地域信仰を集める。
- 意味:技術力の向上・地域産業の守護。
比多伎大神(ひたかみのおおみかみ)
- 属性:東北の祖神・太陽神系
- 概要:日高見国(東北地方)に関わるとされる神で、古代東北の豪族の信仰対象。正体は諸説ある。
- 意味:土地の守護・自然信仰・独自の文化的視点。
甕速日命(みかはやひのみこと)
- 属性:水・雨・霊水の神
- 概要:速さ・水の勢い・祓いの霊力をもつとされる神。名に「甕」が含まれる神は、神酒や霊水と関係が深い。
- 意味:潤い・清め・エネルギーの循環。


知恵・医療・祓いの神|人の暮らしと魂を支える神々
思金神(おもいかねのかみ)
- 属性:知恵・策の神
- 概要:天照大御神が岩戸に隠れた際、祭儀や神々の采配を立案した知恵の神。思慮深さの象徴とされる。
- 意味:学問・判断力・知恵の導き。
少彦名命(すくなひこなのみこと)
- 属性:医薬・酒・農耕・小人神
- 概要:大国主命とともに国造りを進めた神。小さな身体に神通力を秘め、薬草・温泉・酒造など民の生活に密接な神として知られる。
- 意味:健康・癒し・治癒・智慧ある暮らし。
速佐須良比売神(はやさすらひめのかみ)
- 属性:祓い・清めの神
- 概要:災いを遠ざけるための神で、名に“速くさすらう”ことから、悪しき気や穢れを追い払う神格として祀られる。
- 意味:厄除け・心身の浄化・穢れを祓う。
天児屋命(あめのこやねのみこと)
- 属性:祝詞・言霊・祭祀の神
- 概要:天岩戸の神事で祝詞を奏上した神で、神道の祭祀や祝詞を司る中核神。中臣・藤原氏の祖神としても知られる。
- 意味:言葉の力・祈りの導き・信仰の継承。
宇気母智神(うけもちのかみ)
- 属性:食物の神(男神説あり)
- 概要:五穀を生む力を持つ神。月読命に殺されたのち、その遺体から様々な食物が生まれたと伝わる。
- 意味:豊穣・命の糧・自然の循環。


まとめ|男神たちの物語を通して見えてくるもの
日本神話に登場する男神たちは、
天地のはじまりに生まれた創造神から、
国を造り、人々を導き、自然と共に生きた神々まで、
さまざまな側面を持つ存在です。
ときに荒ぶり、ときに静かに、
それぞれの役割を果たしながら
この世界の土台を築いてきました。
彼らの神話を知ることは、
私たちの生き方や価値観を見つめなおすきっかけにもなります。
このページでご紹介した男神たちが、
皆さまの日常に少しでも力や導きを与えてくれる存在となれば幸いです。
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