須佐之男命(スサノオ)|特徴・ご利益・日本神話の物語をわかりやすく解説

須佐之男命(すさのおのみこと)は、日本神話に登場する代表的な神のひとりです。

八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した英雄神として知られ、草薙剣(くさなぎのつるぎ)の神話とも深く関わる存在です。

天照大御神(あまてらすおおみかみ)・月読命(つくよみのみこと)と並ぶ三貴神の一柱であり、荒々しい力を持つ神である一方、人々を祓い守る神としても信仰されてきました。

この記事では、須佐之男命の神話やご利益、神話の中での役割などを簡潔にまとめるとともに、須佐之男命をテーマに描いた作品や、小品ジクレー版画、テンペラ作品についても紹介しています。

目次

須佐之男命を描く中で感じてきたこと

須佐之男命は、ヤマタノオロチ退治の英雄であり、
荒ぶる力と清々しさを併せ持つ、日本神話でも特に個性の強い神様です。

長い髭と大柄な男神として描かれることが多いのですが、
私はどうもその姿がしっくりこず、長い間描けずにいました。

けれど、実際に筆を重ねていくうちに、
少しずつそのかたちが見えてきました。

内側に強い意志と静けさを併せ持つ存在として、
自然と浮かび上がってきたのです。

表面的な荒々しさというよりも、
揺るがない芯の強さが先に立つ——
そんな姿として感じられました。

制作では、その「静かな強さ」を軸に据え、
構図や視線の流れを組み立てています。

動きの中にある緊張感と、
そこに宿る意思のようなものを、
画面の中に定着させたいと考えています。

その激しさと静けさが同時に在る姿こそ、
須佐之男命の本質なのではないかと感じています。

今回の作品は、テンペラ技法で制作したものです。
作品の全体図や制作については、こちらでご覧いただけます。

須佐之男命の神像イラスト、金の背景と力強い表情で描かれた日本神話の神

須佐之男命のデジタル作品(ジクレー版画)▶作品を見る

スサノオノミコトとはどんな神様?

スサノオノミコトは、日本の創造に深く関わった神様である、イザナギ・イザナミの間に起こった仲違えが遠因で生まれた神様の一柱です。

もともとイザナギ・イザナミは仲の良い夫婦神でしたが、黄泉の国でイザナミの姿を見たイザナギが逃げ出したことにより、夫婦はそれぞれの道を歩むことになってしまったのです。

その後、イザナギが黄泉の国から戻り、水辺で身を清める「禊(みそぎ)」を行っていた際、顔を洗ったときに次の三柱の神々が誕生しました。

禊によって生まれた「三貴子」

  • 左目から:アマテラス(天照大神)
  • 右目から:ツクヨミ(月読命)
  • 鼻から:スサノオノミコト(須佐之男命)

この三柱は、日本神話において重要な神々として「三貴子(さんきし)」と呼ばれています。

そしてイザナギは、それぞれの神に以下のような役割を与えました。

  • アマテラス → 高天原(たかまのはら)の統治
  • ツクヨミ → 夜の世界の統治
  • スサノオノミコト → 海原(うなばら)の統治

仕事放棄から「誓約」へ

海原の統治を任されたスサノオノミコトでしたが、仕事をせずに泣きわめきました。
その勢いは、青山が枯れ、川や海までもが乾いてしまうほどの激しさだったと伝えられています。

なぜスサノオは泣いたのか?

これには理由がありました。
スサノオノミコトは、「母の国である根の堅州国(ねのかたすくに)に行きたい」という想いを抱いていたのです。

父・イザナギの怒りと追放

結局、イザナギはその姿勢を見かねて、スサノオノミコトを**「芦原中国(あしはらのなかつくに)」へ追放**します。

  • ※芦原中国は、高天原と黄泉の国のちょうど中間にあたる場所です。

姉・アマテラスへの別れの挨拶

スサノオノミコトは、追放される前に姉・アマテラスに別れを告げようと高天原を訪れます。
しかし、彼が歩くだけで暴風雨を引き起こすほどの神であったため、アマテラスは驚き、「弟が高天原を奪いに来たのでは」と警戒して武装してしまいます。

誤解を解くための「誓約(うけひ)」

スサノオノミコトは誤解を解くため、「誓約(うけひ)」という儀式を提案します。

  • 誓約とは: 神々の間で行われる神聖な約束や潔白の証明の儀式。
  • 現代でいえば、神聖な占いのようなものです。

誓約の方法

アマテラスとスサノオは、それぞれの持ち物を交換し、そこからどのような神が生まれるかによって潔白を証明し合いました。

  • スサノオノミコト → 十握剣(とつかのつるぎ)をアマテラスに渡す
     → そこから生まれたのは女神
  • アマテラス → 勾玉の玉串をスサノオに渡す
     → そこから生まれたのは男神

誓約の結果と潔白の主張

このことから、スサノオノミコトはこう主張しました:

「自分の剣から女神が生まれたのだから、私は清らかな心でこの儀式に臨んでいた証拠である」

スサノオノミコトの乱行と高天原からの追放

潔白を主張していたスサノオノミコトでしたが、その後の行動は次第に暴走を始め、高天原(たかまがはら)では神々の秩序を乱す存在となっていきました。

スサノオの乱行

  • 田んぼの畔(あぜ)を壊す
  • 神聖な馬を「逆剥ぎ(さかはぎ)」にし、機織り小屋へ投げ込む

これらは、神々の世界では重大な禁忌とされる行為でした。
とくに機織り小屋での一件では、神聖な女性神が命を落とすという、取り返しのつかない悲劇を招いてしまいます。

アマテラス、天岩戸に隠れる

弟スサノオの暴走に心を痛めた太陽神・アマテラスは、恐れと悲しみの末に、「天岩戸(あまのいわと)」と呼ばれる岩の洞窟へと身を隠してしまいました。

その瞬間、世界から太陽の光が消え、地上には深い暗闇が広がっていきます。
光を失った大地では、作物は育たず、人々の間には病が流行し、世の中は混乱と不安に包まれました。
まるで世界そのものが沈黙し、神々の世界も人々の暮らしも、深い苦しみの中に閉ざされてしまったかのようでした。

八百万の神々、知恵を集める

困り果てた八百万(やおよろず)の神々は、天岩戸に隠れてしまったアマテラスを再び外に導き出すため、知恵を絞って次のような策を練りました。

  • まずは岩戸の前で賑やかな祭り騒ぎを始める
  • 神々が集い、神楽(かぐら)の起源とされる祝いの舞を披露
  • その中心で、天宇受売命(アメノウズメノミコト)が陽気に踊り出す
  • 神々はこれを見て、声を上げて大笑いする

この楽しげな騒ぎに興味を持ったアマテラスは、岩戸の扉からそっと外の様子をのぞきます。
その一瞬の隙を逃さず、他の神々が岩戸を押し開け、アマテラスを外の世界へと引き戻すことに成功したのです。

こうして太陽の光は再び世界に戻り、長く続いていた暗闇と混乱に終止符が打たれました。
大地には再び秩序が訪れ、神々の世界にも光が満ちていったのです。

スサノオノミコト、ついに追放される

騒動の元凶とされたスサノオノミコトには、ついに下記のような神罰が下されます。

  • 髭を切り落とされる
  • 手足の爪を剥がされる
  • 高天原から追放される

神としての威厳を剥奪されたスサノオは、
天上の世界から追われ、地上――芦原中国(あしはらのなかつくに)へと放逐されることになりました。

暴れ神から英雄神へ

しかし、スサノオノミコトの物語はここで終わりません。
地上に降りた彼は心を改め、人々のために戦い、数々の偉業を成し遂げていくことになるのです。

暴れ神から英雄神へ――

その劇的な転換こそが、スサノオという神の最大の魅力なのかもしれません。

スサノオノミコトさまは、高天原でこそパッとしませんが、地上に降りてから大活躍をします。
安定していた神々の世界では持て余す力を、地上で発揮することになるのです。

出雲に天降ったスサノオノミコトとヤマタノオロチ退治

須佐之男命をテーマに描いた作品(奥田みき)

地上に降りたスサノオノミコトとヤマタノオロチ退治

高天原を追放されたスサノオノミコトは、地上――出雲国の肥河(ひのかわ)上流・鳥髪(とりかみ)の地(現在の島根県・船通山)に天降ります。

そこで彼は、老夫婦と一人の美しい娘・クシナダヒメと出会います。

クシナダヒメとの出会いと悲劇

話を聞いたスサノオは、衝撃の事実を知らされます。

  • 老夫婦にはかつて8人の娘がいた
  • しかし、恐ろしい怪物「ヤマタノオロチ」によって、すでに7人が食べられてしまった
  • 今まさに、最後の娘・クシナダヒメまでもが奪われようとしている

絶望の淵にある老夫婦を前に、スサノオノミコトはこう告げます。

「その娘を妻にくれるなら、私がそのオロチを退治してみせよう」

この瞬間から、神と怪物の壮絶な戦いの幕が上がります。

オロチ退治の準備と策略

まずスサノオは、クシナダヒメを安全な場所に隠すため、櫛(くし)に姿を変えさせ、自らの髪に挿します。
その上で、周到な準備を始めます。

  • 家のまわりに垣根を張り巡らす
  • 垣根には8つの門と8本の桟橋を設ける
  • 各門の前には、**強い酒(八塩折の酒)**を満たした大桶を設置

この酒は、何度も醸造された特別なもので、ヤマタノオロチを酔わせるために用意された秘策でした。

オロチとの対決と「草薙剣」の誕生

やがて現れたヤマタノオロチは、酒の匂いにつられて桶の中身をすべて飲み干し、酔いつぶれて眠ってしまいます。

スサノオノミコトは、その隙を逃さず剣を手に取り、巨大な体を切り刻んでいきました。
そして尾を斬ったとき――中から**見事な太刀(たち)**が現れます。

この剣は草薙剣(くさなぎのつるぎ)と名付けられ、スサノオから姉・アマテラスへ献上され、のちに

三種の神器のひとつとされました。

須佐之男命のジクレー版画を和室に飾った様子、金の背景と力強い神像の展示イメージ

作品を見る荒ぶる力と揺るがぬ意志を象徴として描いた、須佐之男命。ジクレー版画。

クシナダヒメとの結婚と神の子

ヤマタノオロチを退治したスサノオノミコトは、約束通りクシナダヒメを妻とし、二人は夫婦となります。

やがて、二人の間には八島士奴美神(やしまじぬみのかみ)という神が誕生しました。
この神は、後に続く出雲の神々の祖先とされます。

クシナダヒメについては下記の記事で詳しくご紹介しています。

スサノオノミコトの「2番目の妻」神大市比売(カムオオイチヒメ)

実はスサノオノミコトには、もう一人の妻がいます。
その名は、神大市比売(カムオオイチヒメ)

カムオオイチヒメは、**山の神・大山津見神(オオヤマツミ)**の娘です。

スサノオとの間には、以下の二柱が生まれました:

  • 宇迦之御魂神(ウカノミタマ)
     → 五穀豊穣を司る、稲荷神と同一視される神
  • 大年神(オオトシノカミ)
     → 農耕・年神としての性格を持つ神

神大市比売(カムオオイチヒメ)と宇迦之御魂神(ウカノミタマ)に関する詳細は、当サイトの別記事にて紹介しておりますので、
詳しく知りたい方はぜひそちらもご覧ください。

スサノオノミコトの家系図

スサノオノミコト(須佐之男命/素戔嗚尊)は、天照大御神・月読命と共に「三貴子」と呼ばれる高天原の重要神の一柱です。
ヤマタノオロチ退治の神話などから、勇猛果敢で英雄的な側面が強調される一方、高天原での暴虐エピソードなど、二面性のある個性ゆえに、日本神話の中でも非常に人気のある神となっています。

<親神>

  • 伊邪那岐命(イザナギノミコト)
  • 伊邪那美命(イザナミノミコト)

<きょうだい神(※三貴子)>

  • 天照大御神(アマテラスオオミカミ)
  • 月読命(ツクヨミノミコト)

<誓約(うけい)により生まれた神:宗像三女神(むなかたさんじょしん)>

  • 田心姫命(タゴリヒメノミコト)
  • 湍津姫命(タギツヒメノミコト)
  • 市杵島姫命(イチキシマヒメノミコト)

<櫛名田比売(クシナダヒメ)との間に生まれた神>

  • 八島士奴美神(ヤジマジヌミノカミ)
    ※表記は「八島士奴美神」または「八島篠見神」など諸説あり

<神大市比売(カムオオイチヒメ)との間に生まれた神>

  • 大年神(オオトシノカミ)
  • 宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)

須勢理毘売命(スセリビメノミコト)

スサノオとクシナダヒメの娘で、大国主命の妻。父の試練を乗り越えた大国主と結ばれ、夫婦和合の象徴とされる神です。

「素戔嗚尊」と「須佐之男命」はどっちが正解?

スサノオノミコトの漢字表記は、よく「素戔嗚尊」と「須佐之男命」の2種類が用いられます。

古事記には須佐之男命と記載されていますが、日本書紀では素戔嗚尊が用いられています。

このような違いが生じた理由として考えられているのが、それぞれの文献の「表記の違い」です。

古事記では、漢式和文と呼ばれる「漢字だけで当時の日本語の文章を表現する文体」が用いられ、日本書紀では漢文が用いられているものと考えられています。

また、古事記における表記は当て字であり、漢字そのものは特に意味を持たないとされています。

ひらがな・カタカナ・漢字といった文字がほぼ統一されていて、識字率が高い状況である現代の日本とは異なり、当時の日本で表記を統一することは難しかったものと推察されます。

スサノオノミコトのご利益

スサノオノミコトは、神話では乱暴者として描かれる一方で、後に反省し人々を助ける行動をとるなど、非常に人間味あふれる神様です。そのため、幅広い分野においてご利益があるとされています。

代表的なご利益

  • 🔹 厄除け
    災いや不運を祓う力があるとされ、多くの神社で「厄除けの神」として祀られています。
  • 🔹 必勝祈願
    ヤマタノオロチ退治に見られる勇敢さから、勝負ごとや試験などの成功を祈る神としても信仰されています。
  • 🔹 身体健全・病気平癒
    健康を守る力があるとされ、病の平癒や体調の回復を願う人々にも親しまれています。
  • 🔹 家内安全
    家族の平和や安全を守る守護神として、家庭円満を願う人々に信仰されています。
  • 🔹 縁結び
    妻・クシナダヒメとの神話にちなみ、良縁や夫婦円満のご利益もあるとされています。

暴風雨を司る神でありながら、その強大な力が転じて、私たちを災厄から守る存在と解釈され、多方面でのご利益が信じられるようになったと考えられます。

須佐之男命(すさのおのみこと)を祀る神社

須佐之男命(すさのおのみこと)は、日本各地の神社で祀られている神様です。

神話の舞台となった出雲地方をはじめ、京都の八坂神社、関東の氷川神社、愛知の津島神社など、全国に多くの信仰が広がっています。

厄除け・疫病除けの神として知られ、地域の守り神として長く信仰されてきました。

須佐之男命を祀る代表的な神社については、以下の記事で詳しく紹介しています。

まとめ:スサノオノミコトという神の姿 〜人間味あふれる神話の英雄〜

スサノオノミコトは、日本神話の中ではネガティブに描かれている部分もありますが、基本的には神話の中核を担う重要な神様の一柱です。


  • 母恋しさから仕事を嫌がる弱さを見せたかと思えば、
  • 勇猛果敢に大蛇・ヤマタノオロチを退治する英雄的な一面もある。

このように、スサノオノミコトはとても多面的で、
現代風に考えれば、「適材適所」そのものを体現したような神様といえるかもしれません。

最終的には、妻にも子にも恵まれ…

  • 愛するクシナダヒメと結ばれ、
  • 尊い子どもたちを授かり、
  • 魂の住まう場所(根の堅州国)を見出すという、
     ひとつの旅路の終着を迎えます。

まるで人の一生を思わせるような、波乱万丈な神話を持つ神様・スサノオノミコト。

その生きざまは、今もなお多くの人に響き、
今日も、私たちの願いを“我が事”のように聞き届けてくださっているのかもしれません。

須佐之男命(すさのおのみこと)ジクレー版画

須佐之男命(すさのおのみこと)のジクレー版画を額装で飾ったイメージ写真。金の八雲と黒の装束を描いた奥田みきの神仏画。

須佐之男命・ジクレー版画

須佐之男命の凛とした佇まいに目を留めるたび、
思考や感情の重なりが、そっと背筋を正すように整っていく——
そんな静かな感覚が生まれます。
古くから「八雲」をめぐる物語に象徴されるように、
内側の混乱をひとつずつ収め、澄んだ方向へと導いてくれる存在として。
この一枚が、あなたの空間に静かな秩序と、凛とした気持ちをもたらせたなら嬉しく思います。

各サイズ・仕様の詳細は、ショップページにてご案内しております。

日本の神様・仏様の作品一覧

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現代的な仏画や龍神画を描くアート講座のイメージ、観音菩薩の絵を制作している様子

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