更新日:2026年3月17日
こんにちは。幻想画家の奥田みきです。
私は「日本の密教カード」や「大人の塗り絵・美しい仏画編」などの制作を通して、今の時代の人にも親しみやすい、現代的な仏画を描いています。
仏様の魅力を、もっと多くの人に知っていただきたい。
そして、仏様の絵をもっと気軽に描いていただけたら――そんな思いから、
このブログでは「ネット仏画教室」として、初心者にもわかる「奥田みき式・仏画の描き方」を紹介しています。
初回は、仏様のお顔の各部分の名称や、基本的な描き方について解説します。
楽しみながら読んでいただけたらうれしいです。
▼着彩の手順の記事はこちらです。

仏様の描き方① 仏画の決まりと呼び方

上記の記事でも触れていますが、仏様のお姿にはいくつかの「決まり」があります。
私が描く仏画は、背景や全体の雰囲気にはオリジナルの表現を取り入れることが多いのですが、持物やポーズなどは、それぞれの仏様の決まりを大切にして描くようにしています。
仏様のお姿や祈祷の仕方などは「儀軌(ぎき)」と呼ばれる典籍に記されており、一般の方には分かりにくい部分も多くあります。
私自身も、お仕事でご一緒している僧侶の方からお話を伺う機会があり、そうしたことを学びながら制作しています。
また、信仰のために描かれる正統な仏画以外にも、仏画にはさまざまな呼び方があります。
・仏教美術
・仏画イラスト
・現代仏画
・仏絵
呼び方は違っていても、仏様のお姿に惹かれ、描いてみたいと思う気持ちは同じなのではないでしょうか。
仏様の描き方②仏像・仏画の頭部の名称「仏の三十二相」

さて、仏様の造形ですが、仏様のお姿をよく見ていると、普通の人間とは少し違った特徴的な形をしていることに気づくと思います。
これは「仏の三十二相(さんじゅうにそう)」と呼ばれるものです。
三十二相とは、仏様の超越したお姿を仏像や仏画で表すために定められた、さまざまな特徴のことを指します。
その中でも、見た目で分かりやすい大きな特徴が「三十二相」と呼ばれ、さらに細かな特徴として「八十種好(はちじっしゅごう)」と呼ばれるものがあります。
この二つを合わせて
三十二相八十種好と呼ばれます。
いくつか代表的な例を挙げてみます。
真青眼相(しんしょうげんそう)
瞳が紺青色をしていること。
(ちなみに髪も紺青色とされています)
白毫相(びゃくごうそう)
眉間にある「○」の印のようなものです。
眉間に右巻きの白い毛が生えており、ここから光を放つとされています。
「白毛相(びゃくもうそう)」とも呼ばれます。
このほかにも
- 声が美しい
- 足の甲が亀のように整った形をしている
など、さまざまな特徴が伝えられています。
(全身像の仏様を見ると、確かに足の甲が高く表現されていることが分かります)
三道(さんどう)
ちなみに、首にある三本の線「三道」は三十二相には含まれていませんが、仏様の代表的な特徴の一つとされています。
これは単なる「しわ」ではなく、悟りに至る三つの段階を表しているとも言われています(諸説あります)。
過去の仏師たちは、こうした特徴をもとに、人々が拝むにふさわしい「仏様」のお姿を、仏像や仏画として形にしてきました。

上記では、観音菩薩の頭部の名称を図にしました。
観音様は、宝冠に阿弥陀如来の「化仏(けぶつ)」があるのが特徴です。
観音様については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

仏様の描き方③ 仏画の仏様も、基本は人の形
私も講座を行う中でさまざまな生徒さんを見てきましたが、「人間」を描くのが苦手な方はとても多いです。(私もそうでした(笑))
というのも、人というモチーフは私たちが日常で最も見慣れているものだからです。
少しでもデッサンが崩れていると、絵を描かない人が見ても「何か変だな」と違和感を感じてしまいます。
人物を上手く描くためには、いくつかのポイントと正しい練習方法があります。
詳しいことは、また別の記事でデッサンについて解説する予定ですが、今回は「仏画」を描くために必要な部分を抜粋して説明します。
ここでは「写仏」のように見本をなぞる方法ではなく、下絵がなくても仏様の姿を描けるようになるための基本的な手順をご紹介していきます。
講座では、基礎から丁寧に描き方を学ぶことができます。
仏様の描き方④ 観音様の仏像を例に、立体で見てみる

さて、前置きが長くなりましたが、ここから顔の描き方を説明していきます。
このブログでは、ネット仏画教室のように、立体の捉え方も含めて、基礎から少しずつ解説しています。
上の写真は、観音様の立体を分かりやすくするために、モノクロにしたものです。
仏画は普段、平面的に描かれることが多いのですが、上の仏像の写真を見ていただくと分かるように、本来は立体の形をしています。
そのため、普通の人間の顔と同じように、顔全体は「卵形」の立体として光や影がつきます。
(目の周りの筋肉や細い鼻筋など、実際の人間とは違う部分もありますが、大きな形の考え方は同じです。)
この立体の形を、下の図で分かりやすく色分けしてみました。

オレンジの部分が明るい面で、青い部分が影の部分です。
これは通常の人間の顔と同じ考え方です。
オレンジの部分は、おでこや鼻の上の面、頬の出っ張りなど、光が当たる部分になります。
青い部分は、顔の側面などの影になる部分です。
仏画は西洋画のように強い陰影をつけることはあまりありませんが、薄い影の中にもこの図のような正しい影の位置を意識して入れることで、自然な立体感を感じる絵にすることができます。
ちなみにこちらは、通常の人間の顔を面取りして表したものです。
人物のデッサンでは、この面取りの考え方を理解すると、形をとても取りやすくなります。

特に、実際のモデルが目の前にいない状態で「想像で形を組み立てる」必要がある絵では、とても重要な考え方になります。
(イラストや仏画などは、実際のモデルをそのまま描くということは、ほとんどありませんよね)
面取りとは、立体をいくつかのブロックに分けて考えながら描く方法のことです。頭部に限らず、形をブロック分けして捉えるようにすると、立体の形を理解しやすくなります。
仏様の描き方⑤ 十一面観音の作例で見てみましょう

(画像は「大人の塗り絵~美しい仏画編」から一部抜粋)
さて、先ほど説明した立体の考え方を、実際の仏画に当てはめて見てみましょう。
① 完成図
まずは完成した状態の図を見てください。
② 骨格のライン
頭蓋骨と顎の形は、人の顔の基本的な構造です。これを理解していると、安定感のあるお顔になります。
上の図でも、普通の人間と同じように、骨格の形に沿って顔が構成されているのが分かると思います。
③ 影
仏像の説明と同じように、明るい部分に黄色、影になる部分に青を乗せてみました。
実際の仏画ではここまで強く影を入れることはありませんが、このような立体を意識しながら描いています。
こうして正しい骨格や影の位置を理解して描くことで、収まりの良いプロポーションになります。

(完成図・大人の塗り絵の見本画のため、色鉛筆で制作しています。)

仏様の描き方⑥ 菩薩(孔雀明王)の作例で見てみましょう

① 完成図
まずは完成した状態の図です。
② 骨格(頭蓋骨と顎のライン)
顔の基本となる骨格のラインです。頭蓋骨と顎の形を意識することで、顔全体のバランスが取りやすくなります。
③ 目・鼻・口のガイドライン
目、鼻、口が入る位置の目安となるラインです。
このあたりに入る、という「アタリ」を先に描いておくと、全体のバランスがとても取りやすくなります。
④ 影(凹凸)
顔の立体を分かりやすくするため、影の部分を塗ってみました。
仏様のお顔は、普通の人間と比べて鼻筋が細く、目のくぼみが大きいのが特徴です。
そのため、仏様の目は比較的大きく見えることが多いのです。
仏様の描き方⑦ 仏像・仏画は時代によって変化する
仏像や仏画は、飛鳥時代、平安時代、江戸時代など、時代によって少しずつ姿を変えてきました。
その時代ごとに好まれるお顔やプロポーションも違い、いわば「流行」のようなものもありました。
現在ではさまざまなタイプの仏画があり、作家それぞれが個性的な表現で仏様のお姿を描いています。
仏画に興味を持ってくださった方は、ぜひご自身でも描いてみてください。
仏様をとても身近に感じることができると思います。
現代的な仏画を描いてみたい方へ
形式にとらわれすぎない、今の時代に合った仏画を描いてみたい方へ。
アトリエ観稀舎では、仏画教室としても学べる講座をご用意しています。
仏様の基本的な考え方を大切にしながら、やさしく学べる内容です。

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