皆さま、こんにちは。
幻想画家の奥田みきです。
今回は、商売繁盛・金運・芸能・豊漁といった、数多くのご利益を与えてくださる神様として知られる「市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)」について、
「どんな神様なの?」
「弁財天と同じ神様って聞いたことがあるけどなぜ?」
「宗像三女神との関連性は?」
「龍神様とのつながりは深い?」
といった疑問について、スピリチュアル的な解釈も含めお答えしていきます。
市杵島姫命は、日本の歴史に深い関わりを持つ一柱であり、古事記・日本書紀といった歴史書にも名前が登場するほど知名度が高い神様です。
現代においても全国各地の神社で祀られている一方、その詳細については諸説ある状況です。
そのため、この記事では市杵島姫命という神様について、様々な観点からそのお姿をご紹介します。
八百万の神々がおわす日本において、なぜ市杵島姫命が多くの信仰を集めているのか、その理由を紐解いていきましょう。
市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)とは|どんな神様?
市杵島姫命は、日本神話において重要な役割を担う女神様の一柱で、天照大神(あまてらすおおみかみ)・素戔嗚尊(すさのおのみこと)の間で行われた誓約(うけい)によって誕生しました。
誓約のエピソード
かいつまんでエピソードをお伝えすると、弟である素戔嗚尊が自分の国(高天原)まで挨拶にやって来た際、それを攻め込んできたのと勘違いした天照大神が、素戔嗚尊の心を確かめるために誓約を行ったのです。
ここでの誓約とは、いわゆる書面や約束事を交わすことを指しておらず、いうなれば占いのような意味合いです。
天照大神は素戔嗚尊から剣を、素戔嗚尊は天照大神から玉飾りをもらい受け、それぞれを用いて新しい神様を生みました。
二柱が天の安の河をはさんで誓約を行った際、素戔嗚尊が持っていた剣から美しい女神様が生まれたことにより、素戔嗚尊に悪意がなかったことを証明する結果となったのでした。
市杵島姫命の特徴と活躍
市杵島姫命は大変に美しい女神様として信仰されており、参拝者の中には「美人祈願」のため市杵島姫命をお参りする人もいます。
天照大神からの信頼も厚く、邇邇芸命(ににぎのみこと)が地上の国へと降りた天孫降臨では、邇邇芸命とその子孫である天皇を助け、皇室を末永く繁栄させるためのサポート役として、御神勅を受け地上に降りた神様の一柱とされます。
そのような事情もあってか、全国各地に市杵島姫命を祭神とする神社が存在しており、ある意味ではとても知名度の高い神様です。
市杵島姫命と弁財天・弁才天(弁天様)
市杵島姫命という名称は知らなくても、弁財天・弁才天(弁天様)は知っている、あるいはお参りしたことがある方は多いのではないでしょうか。
実は、市杵島姫命は“神仏習合”によって弁財天と同一視された神様で、どちらかというとこれ以降から武家や庶民から信仰を集めたものと考えられます。
神仏習合とは
日本人なら、おそらく一度は歴史の教科書で習ったことがあるキーワードですが、神仏習合とは「神様(神道)の世界」と「仏教の世界」を融合・調和させることをいいます。
分かりやすく概念を説明すると、日本の神様は仏が形を変えてこの世に現れたものと考え、日本の神様を仏教の仏様・神様として再解釈するという考え方です。
まず、インドの古代神話に登場する水と豊穣の女神「サラスヴァティ」が、中国経由で日本に伝わったことにより弁財天として信仰を集めます。
本来、サラスヴァティはヒンズー教の神ですが、日本に伝わるプロセスの中で解釈が変わったためか、仏教の天部(神様)に組み込まれました。
そして、神仏習合の流れの中で、市杵島姫命・弁財天が持つ次の共通点が結びつきました。
●美しい女神
●水に関連する神様
その結果、市杵島姫命と弁財天は同一視されるようになり、全国で多くの信仰を集めるに至ったのです。
市杵島姫命と宗像三女神(むなかたさんじょしん)
市杵島姫命を語る上で重要な存在が、同じタイミングで生まれた二柱の神様です。
先述した天照大神・素戔嗚尊の誓約時、生まれた女神は三柱で、市杵島姫命以外の神様は次の二柱です。
●田心姫命(たごりひめのみこと)
●湍津姫命(たぎつひめのみこと)
この三柱を合わせて「宗像三女神(むなかたさんじょしん)」と呼び、それぞれの神様は宗像大社の三宮に祀られました。
宗像三女伸を祀る宗像大社については、神社の項目に別途記載します。
実は、天照大神から御神勅を受けて地上に降りたのは、市杵島姫命だけではありません。
田心姫命・湍津姫命の二柱も地上に降り、歴代天皇から祀られているものと考えられています。
日本の歴史において、現在の福岡県・宗像地方が最初の国際港であり、海外を相手にした交易・国防の観点から宗像三女神を天皇が祀る必要があったとも解釈できます。
市杵島姫命のスピリチュアル的な意味
神道には様々な謎が多く、名前は知られているのに詳細が分からない神様や、祝詞には名前があるのに日本ではあまり知られていない神様も少なくありません。
市杵島姫命も「戔嗚尊が八岐大蛇を退治した話」や「大国主命の国作りの話」といったような、史話のメインとして登場する神様ではありません。
にもかかわらず、市杵島姫命(弁財天)は多くの人々に信仰されており、市杵島姫命だけをお祀りする神社もあるほど、宗像三女神の中では飛び抜けた知名度といえます。
近年では、古代の巫女さながらの霊感の高さ・感性の鋭さを持つ方が増えてきており、いわゆる「スピリチュアルメッセージ」として神々の御言葉を伝える活動をされている方もいらっしゃいます。
そのような方々は、市杵島姫命が祀られている神社に足を運び、次のようなメッセージを受け取り発進されています。
●人生を楽しむ
●魂の美しさこそ真の美しさである
●思考と見方を変えることで、幸せと財がたくさん流れ込んでくる
女性として美しくあるにはどうすればよいのか、幸せになるにはどうすればよいのかを、私たち人間にお教えくださっている神様だということが分かります。
市杵島姫命と龍神信仰
市杵島姫命は、龍神信仰とも深い関わりがある神様の一柱です。
生誕のルーツである父神・素戔嗚尊は八岐大蛇を退治していますし、弁財天のルーツとなる神様・サラスヴァティはインドで川の神様として崇められていました。
宗像三女神も、宗像地域の水源である釣川と関わりが深い神々であり、海に近い神社で宗像三女神を祀る例も数多く存在します。
また、弁財天としての活躍は日本各地で言い伝えられており、以下のようなエピソードが有名です。
延喜帝(醍醐天皇)の臣下が、竹生島の弁才天の社に詣で時を過ごしていた際、光り輝く弁財天と龍神に祝福されたエピソード
弁財天に恋心を抱き、悪行を止めた五頭龍のエピソード
このように、市杵島姫命(弁財天)には、龍神にまつわるエピソードが数多く存在しています。
日本では、龍神そのものが仕事運・金運向上などを目的として信仰されている経緯があり、その流れから市杵島姫命の信仰も強まったものと推察されます。
市杵島姫命とご縁のある神社
市杵島姫命をお祀りしている神社としては、やはりルーツとなる宗像神社(むなかたたいしゃ)や、世界遺産として登録され圧倒的な知名度を誇る厳島神社(いつくしまじんじゃ)などが有名です。
まずは有名な二社をご紹介いたします。
宗像大社
宗像大社(むなかたたいしゃ)は、福岡県宗像市にある神社で、日本神話に登場する日本最古の神社の一つです。
御祭神は、天照大神と素戔嗚尊の間に生まれた三女神であり、沖津宮(沖ノ島)、中津宮(大島)、辺津宮(本土)にそれぞれ祀られています。これらの三宮を総称して宗像大社と呼びます。
宗像大社は、海上・交通安全の神としての信仰を集めており、特に沖ノ島は「神宿る島」として知られ、2017年には「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群の一部として世界文化遺産に登録されました。
沖ノ島では、古代からの祭祀遺構や奉献品が多数発見されており、「海の正倉院」とも称されています。
宗像大社は、その歴史的価値と美しい自然環境で、多くの参拝者や歴史愛好家から尊敬を集めています。
高宮斎場
宗像大社の高宮斎場は、神社の社殿が建立される以前に祭祀が行われていた場所で、三女神が降臨したとされる聖地です。
古代の神道形式で祭礼が行われていたと言われ、現在もその神聖な雰囲気を色濃く残しています。
日本の古い信仰形式を今に伝える重要な場所となっています。
厳島神社
厳島神社(いつくしまじんじゃ)は、広島県厳島(宮島)にある神社です。
全国に約500社ある厳島神社の総本社です。1996年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
厳島神社は、広島湾に浮かぶ厳島の北東部、弥山北麓に鎮座しており、厳島は「安芸の宮島」とも呼ばれ、日本三景の1つに数えられています。
平家からの信仰で有名で、平清盛により現在の海上に立つ大規模な社殿が整えられました。
大願寺
市杵島姫命は神仏習合時代には仏教の女神の弁才天と習合し、隣接する大願寺と一体化して大伽藍を構成していました。現在、大願寺は「日本三大弁才天」の1つとされています。
厳島神社の近くに位置する大願寺は、真言宗の寺院です。
本尊は薬師如来で、重要文化財に指定されている仏像を含む多くの仏像が安置されています。
毎年6月17日には厳島弁財天大祭が行われ、秘仏である八臂弁才天像が一般公開されます。
網走神社
この先は“意外なところで祀られている”ケースに絞り、市杵島姫命とご縁のある神社もいくつかご紹介します。
網走と聞くと、例えば「網走刑務所」や「ゴールデンカムイ」などのドラマチックなイメージが強いかもしれません。
しかし、北海道網走市には、厳島神社からの御分霊を奉迎鎮斎している由緒正しい神社・網走神社が鎮座しています。
市杵島姫命だけでなく、宗像三女神をお祀りしているのは、北海道では珍しいケースと言えるかもしれません。
海の恵み豊かな環境で暮らす網走の人々が、漁業の繁栄や海上守護を願い、祈りを捧げる姿が想像されます。
前川神社
埼玉県川口市にある前川神社では、宗像三女神が御祭神「勢貴大明神(せきだいみょうじん)」として信仰されています。
前川神社は、古代入間川(現在の荒川)の自然堤防上に水難守護のため奉斎された経緯があり、荒ぶる河川を鎮め洪水をふさぎ止めるという御神徳があるとされています。
そのような経緯もあり、厄除け・方位除け・災難除けといったご利益が期待でき、それによって心願が成就するものと考えられ、多くの人々から信仰を集めています。
海に面した場所だけでなく、川に近い場所でも信仰されている点において、特徴的な信仰形態の一つと言えるかもしれません。
姫坂神社
姫坂神社は、愛媛県今治市に鎮座する、歴史ある神社の一つです。
市杵島姫命(神社紹介サイトの表記では市杵島比売命)が主祭神で、家内安全・病気平癒が御神徳とされます。
江戸時代は、今治藩の祈願所として雨乞い祈願の度に藩主も参拝されたとのこと。
平成30年7月の西日本集中豪雨では甚大な被害を受けたものの、多くの方が工事費を寄付されています。
市杵島姫命のご利益
弁財天と同一視される市杵島姫命は、七福神信仰においては「弁天様」となり、日本では非常に人気の高い神様です。
そのため、非常に幅広いご利益があると考えられており、有名なものでは以下のようなものがあげられます。
芸事・芸能
金運・商売繁盛
豊漁
美人祈願
海上・航海安全 など
このほか、邇邇芸命の生育に携わったとして、子守の神様として信仰されている地域もあります。
市杵島姫命は、様々な地域で人々の願いを聞き届けてくれる、優しい神様であることが分かります。
まとめ
市杵島姫命は、古くから日本の歴史を見つめ、日本で暮らす人々の生活を見守ってきた神様の一柱です。
神仏習合によって弁財天と同一視されるようになると、さらに信仰を集めるようになったものと推察され、弁財天の奇跡は全国各地で今なお伝えられています。
「美しくありたい」と願う女性の祈りを聞き届けてくれる神様としても知られ、前向きなスピリチュアルメッセージを受け取る方も多いようです。
ご利益も多岐にわたり、神社によって御神徳も異なることから、お参りの際はご自身の願いを明確にした上で参拝されることをおすすめします。
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