こんにちは。幻想画家の奥田みきです。
観音様は、私たちの願いや悩みに応じてさまざまな姿に変化し、救いの手を差し伸べてくださる存在です。中でもよく知られているのが「三十三観音」。
このページでは、三十三観音の由来や、観音経(法華経・普門品)との違い、それぞれの観音の意味と特徴を一覧で分かりやすくご紹介します。観音信仰や霊場巡りに興味のある方、また仏画や仏像に惹かれる方にも楽しんでいただける内容です。
三十三観音とは?

「三十三観音」とは、観音様が三十三のお姿に変化して人々を救うという教えを元に、日本で独自に信仰されるようになった観音菩薩のかたちです。
これは『法華経』の中の「観世音菩薩普門品(ふもんぼん)」──通称「観音経」に記された「三十三の変化身(へんげしん)」をもとに、江戸時代に入ってから信仰・図像として整理されたものです。
- 元々の三十三変化=経典に基づく観音の姿(如来や天などを含む)
- 三十三観音=霊場巡りや仏画に基づく信仰上の観音像
つまり「観音経の三十三変化身」と「三十三観音」は直接対応していない点が特徴です。

三十三観音の信仰と歴史
「三十三観音」は、時代とともに信仰が広まり、各地で霊場巡りが行われるようになりました。代表的な巡礼地には次のようなものがあります。
巡礼名 | 特徴 |
---|
西国三十三所 | 最古の観音霊場。関西中心に展開 |
坂東三十三観音 | 関東地方の観音霊場 |
秩父三十四観音 | 埼玉県中心。三十三観音+結願所 |
会津三十三観音 | 福島県にある東北地方の霊場 |
三十三観音の名前と意味一覧
以下は、図像や霊場で信仰されている三十三観音の一覧です。それぞれに中国起源・日本の信仰・自然との結びつきなど多様な背景があります。
▼ 三十三観音の一覧は長いため、折りたたんで表示しています。
下記の「▶ 三十三観音一覧を見る」をクリックすると、すべての観音様の特徴と意味をご覧いただけます。
▶ 三十三観音一覧を見る
番号 | 名称 | 読み方 | 特徴・意味 |
---|
1 | 楊柳観音 | ようりゅうかんのん | 柳の枝で病を癒すとされる。薬師観音とも関連 |
2 | 龍頭観音 | りゅうずかんのん | 龍の頭上に乗る勇ましい姿 |
3 | 持経観音 | じきょうかんのん | 経巻を持ち教えを伝える観音 |
4 | 円光観音 | えんこうかんのん | 円光(後光)を背にした姿 |
5 | 遊戯観音 | ゆうげかんのん | 雲に乗り遊ぶように舞う姿 |
6 | 白衣観音 | びゃくえかんのん | 白衣をまとい慈母のような姿 |
7 | 蓮臥観音 | れんがかんのん | 蓮の上で横たわる姿 |
8 | 滝見観音 | たきみかんのん | 滝を見つめ瞑想する姿 |
9 | 施薬観音 | せやくかんのん | 薬を施し癒しを与える姿 |
10 | 魚藍観音 | ぎょらんかんのん | 魚を持つ。海の守護者 |
11 | 徳王観音 | とくのうかんのん | 徳をそなえた王の姿 |
12 | 水月観音 | すいげつかんのん | 湖面に映る月を見つめる姿 |
13 | 一葉観音 | いちようかんのん | 一枚の蓮に乗る姿 |
14 | 青顎観音 | しょうがくかんのん | 青黒い顎をもつインド起源の観音 |
15 | 威徳観音 | いとくかんのん | 水辺で蓮を持つ威厳ある姿 |
16 | 延命観音 | えんめいかんのん | 生命の連続を表す。長寿祈願 |
17 | 衆宝観音 | しゅうほうかんのん | 宝を象徴する観音 |
18 | 岩戸観音 | いわとかんのん | 洞窟の中で禅定に入る姿 |
19 | 能静観音 | のうじょうかんのん | 静かに物思いにふける姿 |
20 | 阿耨観音 | あのくかんのん | この上なく優れた意味 |
21 | 阿麼提観音 | あまだいかんのん | 白獅子に乗った姿(平安時代) |
22 | 葉衣観音 | ようえかんのん | 藁の上に座す姿 |
23 | 瑠璃観音 | るりかんのん | 瑠璃の香炉を持つ |
24 | 多羅菩薩 | たらぼさつ | ターラ菩薩。観音の涙から生まれた慈母的存在 |
25 | 蛤蜊観音 | こうりかんのん | 大きなハマグリに乗る |
26 | 六時観音 | ろくじかんのん | 昼夜を問わず救済をもたらす観音 |
27 | 普悲観音 | ふひかんのん | 白衣で岩の上に立つ姿 |
28 | 馬朗婦観音 | めろうふかんのん | 魚藍観音に近い。道教の影響 |
29 | 合掌観音 | がっしょうかんのん | 両手を合わせ祈る姿 |
30 | 一如観音 | いちにょかんのん | 雲の上に片膝を立てる姿 |
31 | 不二観音 | ふじかんのん | 水の上に立つ一体の蓮上の姿 |
32 | 持蓮観音 | じれんかんのん | 蓮を持つ少女のような観音 |
33 | 酒水観音 | しゃくすいかんのん | 香水を持ち、散杖を持つ姿 |
観音経に登場する三十三の変化身(観音菩薩の変化)

観音様は、あらゆる人々の願いや苦しみに応じて、その姿を自在に変える存在として信仰されています。
その中でも『法華経』の「観世音菩薩普門品(ふもんぼん)」、通称「観音経」には、三十三の姿に変化して人々を救う観音菩薩が説かれています。
この三十三の変化身は、人・神・精霊・天女など、さまざまな存在に姿を変え、私たちを見守ってくれるとされるものです。
詳細は下記の表をご参照ください。
▶観音様の三十三変化を見る
2 | 辟支仏身 | びゃくしぶつしん | 一人で悟りを開く仏(独覚) |
3 | 声聞身 | しょうもんしん | 釈迦の弟子、声を聞いて悟る聖者 |
8 | 天大将軍身 | てんだいしょうぐんしん | 詳細不詳(天部の武将的存在) |
9 | 毘沙門天身 | びしゃもんてんしん | 財宝神・武神として信仰 |
29 | 阿修羅身 | あしゅらしん | 戦いの神。仏法に従う八部衆の一尊 |
30 | 迦楼羅身 | かるらしん | 金翅鳥(きんしちょう)。龍を食べる聖鳥 |
三十三という数字の意味とは?

「三十三」という数字は、ただの偶然ではありません。
この数には、インド神話に由来する深い象徴性があります。
古代インドの宇宙観では、世界の中心にそびえる**須弥山(しゅみせん)**の山頂に、「三十三天」と呼ばれる天界の神々が住んでいるとされていました。
観音経は、この**聖なる数「三十三」**を取り入れ、観音様が三十三の姿に変化するという教えとしてまとめられています。
つまり、「三十三の変化」とは、宇宙のあらゆる存在の姿を借りて人々を救う観音様の慈悲の象徴とも言えるのです。
観音様の基本的な意味や種類については、こちらの記事でくわしく解説しています。
まとめ
三十三観音は、単なる数字の象徴ではなく、私たち一人ひとりの願いや悩みに応じて寄り添ってくださる存在として描かれてきました。
そのお姿は多様でありながら、どれも深い慈悲と祈りに満ちています。
霊場巡りや仏画を通して、それぞれの観音様と静かに向き合う時間は、きっと心の内側にも穏やかな気づきをもたらしてくれるはずです。
どうか、あなたにとって特別な観音様とのご縁が訪れますように──。
観音様のジクレー版画
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